Excelは、売上管理や顧客管理、進捗管理、データ集計など、さまざまな業務で使われています。一方で、複雑な関数を調べながら作成したり、毎月同じ集計を繰り返したり、大量のデータから入力ミスを探したりする作業には時間がかかります。
こうしたExcel業務は、生成AIを組み合わせることで効率化できます。
ChatGPTなどの生成AIに「何をしたいか」を自然な言葉で伝えれば、必要な関数の候補や集計方法、チェック手順を考えてもらえます。
また、ExcelのCopilotを利用できる環境では、Excel上で数式の生成やデータ分析、グラフやピボットテーブルの作成などを支援してもらうことも可能です。
ただし、AIにExcel業務をすべて任せればよいわけではありません。AIが作った数式や分析結果が正しいとは限らないため、人が結果を確認し、Excelの機能と組み合わせて使うことが重要です。
この記事では、関数作成、集計・分析、チェック作業を中心に、Excel業務へAIを活用する方法を解説します。
Excel業務でAIを活用すると何ができるのか
Excel業務へのAI活用は、大きく「関数や数式の作成」「データの集計・分析」「データのチェック・整理」の3つに分けて考えるとわかりやすくなります。
AIを使う目的は、Excelの操作をすべてAIに置き換えることではありません。調べる、考える、確認方法を設計するといった周辺作業を短縮し、Excelでの処理をスムーズに進めることにあります。
これまでは、やりたい処理があっても、適切な関数名や書き方がわからなければ自分で検索して調べる必要がありました。
生成AIを使えば、「A列の値が特定の条件を満たした件数を数えたい」といった形で目的を説明し、候補となる関数や数式を提示してもらえます。
生成AIをExcel業務の補助に使う
ChatGPTなどの生成AIは、表の構造や処理したい内容を文章で伝え、関数や作業手順、集計方法を考えてもらう用途に活用できます。
特に、Excelの操作方法はわかるものの、複雑な関数の組み方に迷う場合や、どの方法で集計すべきかわからない場合に役立ちます。
やりたいことを先に言語化し、AIに処理方法を提案してもらうことで、調査にかかる時間を減らせます。
ExcelのCopilotを使って作業する
ExcelのCopilotでは、自然言語による指示をもとに、数式の生成や説明、データの集計、グラフやピボットテーブルの作成、傾向や外れ値の把握などを支援できます。
ただし、利用できる機能はMicrosoft 365の契約や組織の設定などによって異なります。自社環境で利用できる機能を確認したうえで活用する必要があります。
AIを使ってExcel関数・数式の作成を効率化する
Excel業務でAIを活用しやすい分野の一つが、関数や数式の作成です。
関数名を覚えていなくても、「どの列を使って、どの条件で、何を返したいか」を説明できれば、AIに数式の候補を考えてもらえます。
やりたい処理を自然言語でAIに伝える
たとえば、A列に入力された文字列の中から特定の文字列を含むセルの数を数えたい場合、「A列で『○○』を含むセルの件数を数えるExcel関数を教えてください」と伝えます。
重要なのは、最初から関数名を指定しなくてもよいことです。
ユーザーは業務上の条件を整理し、AIにその条件をExcelの数式へ変換してもらえます。これにより、COUNTIF、SUMIFS、XLOOKUPなど、普段あまり使わない関数が必要な場面でも対応しやすくなります。
複雑な関数の修正や説明にもAIを使える
AIは新しい数式を作るだけでなく、既存の数式を読み解く用途にも使えます。引き継いだExcelファイルに長いIF関数が入っている場合、その数式をAIに提示して「何を判定しているのか説明してください」と依頼すれば、処理内容を整理できます。
数式が期待どおりに動かない場合には、エラーの原因候補を確認したり、条件を追加した場合の修正版を作成したりすることも可能です。
AIが作った数式はそのまま使わず確認する
AIが生成した数式は、必ず実際のシートで動作を確認します。参照する列やセル範囲がずれている、絶対参照と相対参照が適切でない、空白と0を同じものとして扱っているなど、意図と異なる数式が生成される可能性があるためです。
まず少数のデータで試し、想定した結果と一致するかを確認してから全体へ適用すると、安全に利用できます。
AIを活用してExcelの集計・データ分析を効率化する
Excelでは、データを集計するだけでなく、「何を基準に集計するか」「どこに注目して分析するか」を考える作業にも時間がかかります。
AIは、この判断を補助する用途でも活用できます。
集計条件や集計方法をAIに整理させる
「月別に売上件数を集計したい」「担当者別の金額を比較したい」「特定条件に当てはまるデータだけを抽出して集計したい」といった目的を伝えると、AIに適した集計方法を提案してもらえます。
単純な合計であればSUM、複数条件であればSUMIFS、件数を確認するならCOUNTIFやCOUNTIFS、項目を組み替えながら確認したいならピボットテーブルなど、目的に応じた方法を整理できます。
AIに答えそのものを出してもらうだけでなく、「このデータを集計するならどの方法が適切か」と相談することで、Excelでの処理設計を効率化できます。
データの傾向や特徴を把握する
集計済みのデータから何を読み取るべきか考える際にもAIを利用できます。ExcelのCopilotでは、データについて質問し、概要や傾向、外れ値などを確認できます。
たとえば、期間ごとの増減、数値が大きく変化している項目、平均との差が大きいデータなど、確認すべきポイントを絞り込む際の補助になります。
ただし、AIが示した傾向だけで結論を出すのではなく、元データや集計条件まで確認する必要があります。
分析結果が正しくても、母数や期間の設定が適切でなければ、業務上の判断を誤る可能性があるためです。
グラフやピボットテーブルの作成も支援できる
ExcelのCopilotでは、グラフやピボットテーブルの作成を指示することもできます。どのような切り口でデータを見ればよいかわからない場合には、「月別の推移を比較したい」「担当者ごとの実績を見たい」と目的を伝え、適した可視化方法を検討できます。
AIを使うことで操作そのものを短縮するだけでなく、集計や可視化の方針を決める時間も減らせます。
AIを活用してExcelのチェック作業を効率化する
Excel業務では、入力後のチェックにも多くの時間がかかります。
重複や空欄、表記揺れ、不自然な数値などを一件ずつ目視している場合は、AIを使って確認方法を整理することで負担を減らせます。
重複・空欄・入力ミスをチェックする
たとえば、顧客一覧に同じメールアドレスが複数存在していないか確認したい場合、AIに「D列のメールアドレスが重複しているか判定する関数を作りたい」と伝えれば、COUNTIFなどを使ったチェック方法を考えてもらえます。
必須項目の空欄チェックや、指定した範囲外の数値を抽出する方法についても同様です。チェックしたい条件を文章で整理できれば、関数や条件付き書式など、Excelで実行できる方法に落とし込みやすくなります。
表記揺れや不自然なデータを整理する
会社名や部署名、商品名などは、入力者によって表記が異なることがあります。全角・半角、スペースの有無、略称などが混在すると、正しく集計できない原因になります。
AIを使えば、どのような表記揺れが想定されるかを整理したり、統一ルールを考えたりできます。また、数値や日付についても、通常の範囲から大きく外れた値を確認する条件を検討できます。
ただし、AIの判断だけでデータを削除したり上書きしたりするのは避けるべきです。同姓同名や似た会社名など、見た目が似ていても別データであるケースがあるため、最終確認は人が行います。
Excel業務でAIを使うときは指示の出し方が重要
AIから適切な回答を得るには、「Excelの関数を教えてください」のような抽象的な質問ではなく、処理条件を具体的に伝えることが重要です。
AIへの指示(プロンプト)の出し方のポイントは次の通りです。
対象・条件・出力結果を具体的に伝える
Excelの数式を作成してもらう場合は、「どの列を参照するか」「どの条件で判定するか」「どのセルに何を返したいか」を明確にします。
たとえば、「A列を確認して重複を探したい」だけでなく、「A2以降の顧客IDについて、同じ値が2件以上存在する場合はB列に『重複』と表示したい」と伝えた方が、意図に近い回答を得やすくなります。
空白を0として扱うのか、エラーの場合は空欄にするのかといった例外条件も最初に伝えると、修正の回数を減らせます。
現在の表の構造を説明する
AIは、列の役割やデータの意味をユーザーと同じように理解しているとは限りません。そのため、「A列は会社名」「B列は売上金額」「1行目は見出し」といった表の構造も必要に応じて説明します。
表の構造、やりたい処理、判定条件、出力結果をセットで伝えることが、Excel業務でAIを使う際の基本です。
Excel業務にAIを活用する際の注意点
AIはExcel業務を効率化できますが、生成された内容を無条件に信用することはできません。業務へ取り入れる際には、正確性と情報管理の両方を確認する必要があります。
最後に、Excel業務にAIを活用する際の注意点についても押さえておきましょう。
AIが生成した関数や分析結果は必ず確認する
生成AIは、もっともらしい内容でも誤った回答を返すことがあります。数式の参照範囲を間違えたり、ユーザーの条件を異なる意味で解釈したりする可能性もあります。
重要な集計では、元データと結果を照合し、想定した条件で計算されているかを必ず確認しましょう。
機密情報や個人情報の入力に注意する
外部の生成AIへExcelの内容を入力する場合は、データの扱いにも注意が必要です。顧客情報、従業員情報、未公開の売上情報などが含まれている場合は、自社のセキュリティポリシーや利用しているAIサービスの契約条件を確認します。
機密性の高い実データを入力する必要がない場合は、必要最小限のダミーデータに置き換え、表の構造や処理条件だけをAIへ伝える方法もあります。
正確な計算はExcelの機能と組み合わせる
AIは、「どの関数を使えばよいか」「どのような集計方法が適しているか」を考える支援には向いています。一方、正確性や再現性が求められる計算では、SUM、IF、XLOOKUPなどのExcel関数を使い、結果を検証することが重要です。
AIに計算を丸ごと代行させるのではなく、AIに処理方法を考えさせ、Excelに計算を実行させるという役割分担にすると、効率と正確性を両立しやすくなります。
まとめ|ExcelとAIを組み合わせて定型作業の負担を減らそう
Excel業務にAIを活用すると、関数を調べる時間、集計方法を考える時間、チェック条件を作る時間などを減らせます。特に、やりたいことは決まっているもののExcelでの実現方法がわからない場面では、生成AIが有効な補助役になります。
一方で、AIが作成した数式や分析結果には誤りが含まれる可能性があります。AIへすべてを任せるのではなく、関数作成や集計設計、チェック方法の検討を支援させ、最終的な計算や確認はExcelと人が担うことが重要です。
まずは毎月繰り返している集計や、都度検索している関数作成など、負担の大きい定型作業からAIを取り入れると、Excel業務の効率化につなげやすくなります。特に、実行結果をすぐに確認できる作業から始めると、AIの得意不得意を把握しながら利用範囲を広げられるでしょう。
シーサイドでは、生成AIツールの活用に関するご相談も受け付けております。
お困りやご相談がありましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
