Salesforceには、顧客情報や営業活動、マーケティング施策、問い合わせ履歴など、部門をまたぐデータが蓄積されます。しかし、情報を登録するだけでは、売上向上や顧客対応の改善にはつながりません。
SalesforceのAI機能を活用すれば、商談情報の要約、営業メールの作成支援、顧客セグメントの抽出、問い合わせへの回答支援などを行えます。
本記事では、営業・マーケティング・カスタマーサポートの3部門におけるSalesforceのAI機能の活用方法と、導入前の注意点・進め方を解説します。
SalesforceにおけるAI活用とは
SalesforceにおけるAI活用は、文章生成だけではありません。CRMの顧客情報や活動履歴をもとに、予測、情報整理、次の対応の提案、定型処理の実行などを支援します。
まずは、SalesforceにおけるAI活用とは何かについて整理します。
Salesforceで活用できる3つのAI
SalesforceのAIは、予測AI、生成AI、AIエージェントの3つに整理できます。予測AIは見込み顧客の優先度や商談進捗を予測し、生成AIはメール、要約、コンテンツ、回答案などを作成します。
AIエージェントは、必要なデータを取得し、目的に応じた手順を組み立て、許可された処理を実行します。参照データと実行範囲の設計が必要です。
Salesforceの製品とAI機能の関係
営業ではAgentforce Sales(旧Sales Cloud)、マーケティングではAgentforce Marketing(旧Marketing Cloud)、カスタマーサポートではAgentforce Service(旧Service Cloud)が、それぞれの業務基盤となります。
Agentforceは、Salesforceの顧客データや業務フローを利用するAIエージェントを構築、カスタマイズ、導入するためのプラットフォームです。Data 360(旧Data Cloud)は、Salesforce内外のデータを接続・統合し、AIや分析、業務フローで活用できる状態にするデータ基盤です。
ただし、それぞれの利用範囲は製品や契約、設定によって異なります。
営業部門におけるSalesforceとAIの活用方法
営業部門では、見込み顧客の確認、商談情報の整理、メール作成などに多くの時間が使われます。
AIを活用すれば定型作業を減らし、営業担当者が提案や関係構築に集中しやすくなります。
営業部門におけるAIの活用について、具体的に紹介します。
リードや商談の優先順位を判断する
企業属性、活動履歴、問い合わせ状況、商談進捗から、対応すべきリードや商談を整理できます。動きがあった顧客や停滞案件を把握できます。
推奨結果は入力済みデータにもとづきます。記録が不十分なら実態と異なるため、AIの結果だけで対応対象を決めてはいけません。
商談内容や活動履歴を要約する
商談メモ、メール、通話記録などを要約し、案件状況、顧客の要望、未対応事項を整理できます。引き継ぎや案件レビューも効率化できます。
要約で重要な条件が省略される可能性もあるため、判断や提案に使う際は元の記録も確認できる状態にします。
営業メールやフォローアップの作成を支援する
顧客情報や商談内容を参照し、お礼、フォロー、次回提案などの下書きを生成できます。文面作成の負担や連絡の遅れを抑えられます。
誤った商品情報や合意内容と異なる表現が含まれる可能性があるため、宛先、金額、日付、約束事項を確認してから送信します。
パイプラインや売上見込みを把握する
商談金額、フェーズ、活動状況、停滞期間から、パイプラインの変化やリスクを整理できます。営業会議を、対応方針を決める場へ変えやすくなります。
売上見込みは確定値ではありません。AIによる予測と、担当者が把握している顧客事情や競合状況を組み合わせて判断します。
マーケティング部門におけるSalesforceとAIの活用方法
マーケティング部門では、顧客データの抽出、対象者の選定、コンテンツ制作、効果測定などに工数がかかります。
SalesforceのAIは、マーケティングに必要な施策設計と日常的な運用作業を支援します。
次に、マーケティング部門における活用について紹介します。
顧客データをもとにセグメントを作成する
顧客属性、行動履歴、購買状況、営業接点を組み合わせ、施策対象のセグメントを作成できます。複数条件の抽出を効率化できます。
施策目的と合わない顧客や配信除外対象が含まれていないかを確認し、データの利用目的や同意状況も踏まえて対象範囲を決めます。
メールやコンテンツの作成を支援する
生成AIは、メールの件名・本文、キャンペーンの訴求案、属性別文面の下書きに活用できます。複数案を短時間で作成でき、担当者は比較や改善に集中できます。
ブランド表現、商品情報、法令、社内ルールへの適合は保証されません。誇張表現や根拠のない効果を避け、公開前の確認が必要です。
顧客ごとのコミュニケーションを最適化する
Agentforce MarketingやData 360のデータを活用し、顧客の属性や行動に応じて配信内容や接点を調整できます。オーディエンス構築、コンテンツ作成、メッセージのパーソナライズ、施策の最適化などが主な対象です。
利用データの範囲を明確にし、顧客にとって自然で有益なコミュニケーションかを確認します。
キャンペーンの結果を分析して改善につなげる
開封、クリック、コンバージョン、商談化のデータを整理し、改善仮説の作成にAIを利用できます。複数指標から、見落としていた傾向を探れます。
数値の変化には複数の要因が関係します。AIの分析結果を原因として断定せず、次の施策で検証する仮説として扱います。
カスタマーサポートにおけるSalesforceとAIの活用方法
カスタマーサポートでは、問い合わせの確認、履歴検索、回答案の作成、担当者への振り分けなどが負担になります。
AIで顧客対応における定型処理を効率化することで、担当者は複雑な問い合わせに集中しやすくなります。
カスタマーサポートにおけるAIの活用について、詳しく解説します
定型的な問い合わせに一次対応する
営業時間、手続き方法、基本的なサービス内容など、回答が明確な問い合わせにはAIエージェントを活用できます。顧客の自己解決を促し、待ち時間を減らせます。
契約変更、返金、障害、個人情報、クレームなどは担当者へ引き継ぎます。AIが回答できない場合の引き継ぎ導線も必要です。
問い合わせ内容と対応履歴を要約する
長文の問い合わせや対応履歴を要約し、顧客の要望、過去の回答、未解決事項を整理できます。担当者が交代しても状況を把握しやすくなります。
要約では表現の強さや細かな条件が失われることがあります。クレームや契約に関わる問い合わせでは、原文も確認したうえで対応します。
ナレッジを参照して回答案を作成する
FAQ、マニュアル、社内ナレッジなどを参照し、問い合わせに応じた回答案を作成できます。担当者は必要な情報を探す時間を減らし、顧客の状況に合わせた調整へ集中できます。
回答精度はナレッジの品質に左右されます。古い手順や重複した回答を整理し、管理者、更新頻度、公開範囲を決めます。
問い合わせを分類して適切な担当者へつなぐ
問い合わせのカテゴリや緊急度を整理し、適切な担当者へ振り分ける業務にもAIを使えます。分類のばらつきを抑え、対応開始を早められます。
重要度の誤判定を防ぐため、特定の語句、契約条件、顧客区分などに応じたエスカレーションルールを設け、結果を継続して監視します。
SalesforceでAIを活用するメリット
SalesforceでAIを活用する目的は、人の業務を単純に置き換えることではありません。情報検索、要約、下書き、分類の負担を減らし、担当者が提案や判断、顧客対応に時間を使える状態を作ります。
SalesforceでAIを活用するメリットは、具体的には以下のようなものが挙げれらます。
定型業務にかかる時間を削減できる
商談要約、メールの下書き、問い合わせ分類をAIが支援し、繰り返し作業を減らせます。作業方法をそろえ、対応漏れも防ぎやすくなります。
顧客データを業務判断に利用しやすくなる
検索、要約、予測を組み合わせ、Salesforceの顧客データを日々の判断に利用しやすくなります。ただし、必要な情報が入力され、更新されていることが前提です。
部門間で顧客情報を共有しやすくなる
3部門が同じ顧客情報を参照すれば、施策への反応、商談状況、問い合わせ履歴をつなげて把握できます。共通の項目定義や引き継ぎルールも必要です。
SalesforceでAIを活用する前に確認すべき注意点
AI機能を導入しても、データや業務ルールが整っていなければ、適切な回答や処理は期待できません。AIが参照する情報、実行できる処理、人が確認する範囲を設計する必要があります。
SalesforceでAIを活用する際には、次のような点に注意しましょう。
Salesforce内のデータを整備する
未入力、重複、古い情報、表記のばらつきがあると、AIは不完全なデータをもとに予測や文章生成を行います。AIを使う業務に必要な項目を特定し、入力責任、更新時期、選択肢、必須条件を整理します。
対象業務で参照する情報から優先して見直します。
AIに任せる範囲と人が判断する範囲を分ける
文章の下書きや要約など、結果を人が確認できる業務は比較的始めやすい領域です。一方、金額、契約、返金、重要顧客への回答など、誤りの影響が大きい処理には人の承認を組み込みます。
情報取得、案の作成、判断、承認、実行に分解し、AIへ任せる範囲を決めます。
セキュリティとアクセス権限を確認する
Salesforceには、生成AI利用時のデータ保護や安全性を支えるEinstein Trust Layerがあります。動的グラウンディング、ゼロデータリテンション、データマスキングなどの仕組みが用意されていますが、利用できる機能は製品、契約、言語、地域などによって異なります。
基盤側の保護機能があっても、自社の権限や共有設定が不適切なら情報管理上のリスクは残ります。AIが参照する項目、利用ユーザー、個人情報や機密情報の扱いを確認し、アクセス権限を見直します。
生成内容や実行結果を確認できるようにする
生成AIは誤情報を出力する可能性があり、AIエージェントは誤った条件で処理を進める可能性があります。送信前の承認、実行履歴、エラー通知、担当者への切り替え、停止方法を用意します。
導入後も結果を監視し、指示、ナレッジ、業務ルールを継続的に改善することが重要です。
SalesforceでAI活用を進める手順
AI活用を進める際は、利用できる機能から考えるのではなく、現在の業務課題から対象を選ぶようにしましょう。
具体的には、目的と効果を確認しやすい業務から始めます。
最後に、SalesforceでAI活用を進める具体的な手順について解説します。
解決したい業務課題を明確にする
「AIを導入する」こと自体を目的にせず、「商談履歴の確認に時間がかかる」「メール作成が遅れる」「問い合わせ分類が担当者によって異なる」など、現在の問題として定義します。
課題を具体化すれば、AIが必要か、既存のレポートやフロー、入力ルールの改善で解決できるかも判断できます。
対象業務と必要なデータを整理する
AIが参照する顧客情報、活動履歴、商談項目、ナレッジなどを確認します。AIが行う処理、担当者が確認する箇所、例外時の対応も業務フローとして整理します。
データが更新されていなければ正しい結果にはつながりません。非効率な手順をそのまま自動化しないことも重要です。
小さな範囲で試行する
特定の部門や担当者、商談プロセス、問い合わせカテゴリなどに対象を限定します。メールの自動送信ではなく下書き生成から始めれば、誤りの傾向や修正工数を確認できます。
出力精度に加え、確認時間、使いやすさ、既存業務への影響も評価します。
KPIを設定して改善する
メール作成時間、商談情報の確認時間、回答案の採用率、問い合わせ処理時間、修正回数などのKPIを設定します。売上や顧客満足度だけでなく、業務プロセスに近い指標も必要です。
導入前と比較し、確認作業の増加や品質低下がないかを確認してから、展開範囲を広げます。
まとめ|SalesforceのAIは対象業務を明確にして活用する
Salesforceでは、予測AI、生成AI、AIエージェントを、営業・マーケティング・カスタマーサポートに活用できます。情報整理や定型作業を効率化できる一方、データ品質、アクセス権限、人による確認が不十分では、期待した成果につながりません。
解決したい課題を明確にし、必要なデータと業務フローを整理したうえで、小さな範囲から試すことが重要です。AI導入を目的にせず、Salesforceのデータを業務判断と顧客対応へ生かしましょう。
シーサイドでは、SalesforceをはじめとしたSFAツールの導入・活用に関するご相談も受け付けております。
お困りやご相談がありましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
