展示会やオフラインイベントは、BtoBビジネスにおける重要なリード獲得・商談機会です。
一方で、「集客のための案内メールを書く時間がない」「ブースのキャッチコピーがマンネリ化している」「フォローメールを書きたいが、手が回らない」といった悩みもつきものです。
こうした課題に対して、生成AIは「企画・コピー作成・文章ブラッシュアップ」を支援する実務ツールとして活用できます。
ただし、「とりあえずAIに書かせる」だけでは、自社の展示会マーケティングがうまく回るとは限りません。
出展目的やターゲット、伝えたいメッセージを整理したうえで、生成AIに適切なプロンプトを渡すことが重要です。
この記事では、展示会などのオフラインイベントの一連の流れに沿って、「展示会×生成AI活用」の考え方を整理します。
メールマーケティングや展示会ブース運営を担うマーケティング・営業企画担当者が、明日から試せるレベルの具体的なヒントをまとめていきます。
展示会・オフラインイベントで生成AIを活用する前に押さえたい前提
まず、展示会マーケティングの全体像を簡単に整理しておきます。
一般的に、展示会やオフラインイベントで成果を出すためには、集客フェーズ・当日フェーズ・事後フォローフェーズといった流れで、一貫したメッセージ設計が必要になります。
生成AIを活用する際も、この流れに沿って「どの場面で、どの作業を支援してもらうか」を決めておくと、プロンプト設計がしやすくなります。
たとえば、あらかじめ次のような情報を整理しておきます。
- 出展目的(新規リード獲得/既存顧客との関係強化/新サービスの認知など)
- 来場ターゲット・ペルソナ(業種・職種・役職・抱えている課題)
- 自社の提供価値・強み(他社との違い、選ばれる理由)
これらを明文化したうえで、「この内容をもとに展示会の集客メール案を出してほしい」「ブースパネルのキャッチコピー案を10個出してほしい」といった形で生成AIに指示すると、アウトプットの精度が高まりやすくなります。
同時に、生成AIは万能ではありません。情報セキュリティへの配慮やファクトチェック等は必ず行うようにしましょう。
また、生成されたコピーなどが、自社のブランドトーンに合うよう最終チェックを行うことも忘れてはいけません。
生成AIは、「展示会マーケティングを支えるアイデア出し・たたき台作成ツール」と位置づけ、人間が方向性と最終判断を担う前提で使うことが重要です。
集客フェーズ|招待メール・LPコピーを生成AIで設計する
展示会集客のシナリオを整理し、生成AIに伝える
集客フェーズでは、展示会・オフラインイベントへの来場を促すための招待メールや案内メール、告知ページ(LP)のコピーが中心となります。
ここでいきなり生成AIに「展示会の案内メールを書いて」と依頼すると、一般的で特徴のない文章になりがちです。
まずは、人間側で次のようなシナリオを整理します。
- どのチャネルで告知するか(メール、Webサイト、LP、SNSなど)
- 誰に向けた案内なのか(既存リスト/新規リード/取引先など)
- 来場者にとってのメリット(課題解決・情報収集・最新情報の把握など)
- 来場によってどんな具体的な価値が得られるか
これらを箇条書きレベルでもよいので整理し、「以下の条件を踏まえて、BtoB展示会の案内メール本文案を3パターン作成してください。」というように、前提情報をセットで生成AIに渡します。展示会の出展目的やターゲットが明確になっているほど、集客コピーは刺さりやすくなります。
招待メール・案内メールの件名と本文を生成AIで量産する
メールマーケティングにおいて、オープン率に直結するのが件名です。展示会の案内メールでは、「誰向けの展示会か」、「どのようなテーマ・課題を扱うか」、「どんなメリットがあるか」といった要素を短く分かりやすく伝える必要があります。
生成AIには、次のような粒度で依頼できます。
- 件名だけを複数案出してもらう
- 本文の「冒頭の掴み」だけを複数パターン生成する
- 一通のメールを「フォーマル」「カジュアル」「経営層向け」などトーン違いで出してもらう
このようにパーツごとに分解してプロンプトを設計すると、メールのABテスト用パターンや、セグメント別の案内メールを効率的に準備することができます。
本文についても、
「ターゲットの課題 → 展示会で得られるメリット → 開催概要 → CTA(登録フォームへの誘導)」
といった基本構成を指定しておくことで、LP(ランディングページ)と整合性のある案内メールを生成しやすくなります。
LP・告知ページのコピーや構成案を生成AIで作る
展示会特設ページやLPでは、メールから遷移したユーザーに対して、より詳しい情報と来場メリットを伝える必要があります。ここでも、生成AIはたたき台づくりに有効です。
たとえば、ファーストビューのキャッチコピー・サブコピーはもちろん、「こんな方におすすめです」「ご参加のメリット」などのセクション文やよくある質問(FAQ)のテキスト案を生成AIに出してもらうことで、コピーライティングの時間を大幅に短縮できます。
また、同じ構成で言い回しだけ変えたパターンを複数作成してもらえば、LPのABテストにも活用できます。
当日フェーズ|ブース訴求・キャッチコピーを生成AIで磨く
ブースで伝えるべきメッセージを整理し、生成AIで言語化する
当日フェーズでは、「通路を歩く来場者がブース前で足を止めるかどうか」が最初の勝負になります。
その判断は、数秒で目に入るパネルのキャッチコピーや、スタッフの声掛けの一言に大きく左右されます。
ここでも、まず人間側で次のような観点を整理します。
- 来場者のよくある課題・悩み
- 自社が提供できる具体的な価値
- 数秒で伝えたいメッセージ(端的なベネフィット)
これらをまとめたうえで、「以下の情報をもとに、展示会ブース用パネルのキャッチコピーを20文字前後で10案作成してください。」というように、文字数やトーンを指定して生成AIに依頼します。
「短く、分かりやすく、専門用語を避けて」といった条件も追加すると、来場者に伝わりやすいコピー案が得やすくなります。
パネル・ポスター用キャッチコピーのパターン出し
ブース装飾には、メインパネルのキャッチコピーのほかにも、サブコピーや説明文が必要です。生成AIには、たとえば次のような指示が可能です。
- 「課題訴求型」「メリット訴求型」「解決策提示型」など、パターンごとにコピーを出してもらう
- 「〇〇な方へ」「たった△△で□□」といった型を指定する
- 似た意味のコピーを言い回しを変えて複数案出してもらう
これにより、コピーライターがゼロから考えるのではなく、「候補の束」から最適なものを選び、微調整するスタイルに切り替えられます。
また、読点の位置や語尾を少し変えたバリエーションを自動的に出してもらうことで、印象の違いを比較しやすくなります。最終的な採用コピーは人間が判断しつつ、生成AIを「案出しマシン」として使うイメージです。
トークスクリプト・Q&Aを生成AIで準備する
ブーススタッフのトークスクリプトやFAQも、生成AIでたたき台を作ることができます。
たとえば、課題をヒアリングするための質問例や、来場者の属性別(経営層、現場担当者など)のトークの組み立て方、よくある質問と回答(料金、導入期間、サポート体制など)といった事柄を事前に整理し、その内容をもとに会話形式のスクリプトを生成してもらいます。
さらに、「初対面での声掛けフレーズ」「名刺交換につなげる一言」「少し興味を持った来場者向けの深掘り質問」など、具体的なシチュエーションを指定してプロンプトを投げることで、実際の現場に近いトーク例を得ることができます。
これらは、展示会でのリード獲得や名刺交換数の向上にもつながる要素です。
事後フォロー|フォローメール・ステップメールを生成AIで設計する
展示会後フォローのシナリオ設計
事後フォローフェーズでは、「名刺交換して終わり」にならないよう、フォローアップメールやステップメールによるリードナーチャリングが重要です。
ここでも、生成AIに依頼する前に、次のような要素を整理しておきます。
- フォロー対象のセグメント(名刺交換のみ/資料請求あり/ブースで長時間話した/既存顧客など)
- 各セグメントごとのフォロー目的(情報提供/オンライン面談の提案/デモの案内など)
- 配信タイミング(展示会直後・1週間後・1か月後 など)
これらを整理し、「このシナリオに沿ってメールのたたき台を作成してほしい」と生成AIに依頼すると、ステップメール全体の構成案が出てきます。
そのうえで、各通ごとの内容やトーンを人間が調整する進め方が現実的です。
初回フォローメール・お礼メールを生成AIで作る
展示会後すぐのフォローメールは、来場への感謝を伝えると同時に、次の接点への導線を用意する役割があります。
生成AIには、件名案・本文の構成・差し込み項目(会社名・氏名・関心を示していたテーマなど)を意識した文章を組み合わせて指示すると、メール配信ツールで利用しやすいフォローメール案を自動生成できます。
展示会名やセッション名など、変数として扱う部分はプレースホルダー(◯◯展、△△セミナーなど)として指定しておくと、そのままテンプレートとして利用しやすくなります。
ステップメール・ナーチャリングメールのたたき台を生成AIで作成
2通目以降のステップメールでは、「いきなり商談のお願い」ではなく、相手の課題整理や情報提供を通じて信頼関係を築いていくことが重要です。
生成AIには、展示会で扱ったテーマに関する課題の整理、その課題に対する一般的な解決アプローチの説明、自社サービス・製品の位置づけや役割を紹介する文章などを組み合わせたメール案を複数通分、出してもらうことができます。
そのうえで、内容が過度にプロモーションに偏っていないか、情報提供として価値があるかを人間がチェックし、メールマーケティングの方針に沿う形に整えます。
MAツールやメール配信ツールと連携する場合は、生成AIで作成したメール案をそのまま流し込むのではなく、件名・本文・CTAの整合性や配信頻度の妥当性を確認し、シナリオ全体のバランスを整えることが大切です。
社内で生成AI活用を定着させるためのポイントと注意点
展示会マーケティングの現場で生成AIを継続的に活用するには、個人の工夫だけでなく、社内でのルールづくりやテンプレート整備も欠かせません。
まず、トーン&マナーや表現に関するガイドラインを用意し、「社名表記」「サービス名の扱い」「禁止表現」などの基本ルールを共有します。
そのうえで、生成AIに投げるプロンプト例や、実際に使えるメールテンプレート、ブースコピーの雛形などをチーム内で蓄積し、再利用できる状態にしておきます。
情報セキュリティの観点では、個人情報や機密情報を入力しないことを徹底し、必要に応じて社内ルールやポリシーを整えることも重要です。
また、生成AIが出力した文章は、必ず担当者がレビューし、上長や法務の承認フローに乗せることで、表現リスクを抑えることができます。
このように、生成AIを単なる「便利ツール」として使うのではなく、社内で共有できる「共通の文章作成基盤」として位置づけることで、展示会・オフラインイベントだけでなく、日常的なメールマーケティングや営業資料作成にも活用範囲を広げていくことができます。
まとめ 生成AIを展示会マーケの「共通言語」として活用する
いかがでしたか?
展示会やオフラインイベントでは、集客コピー、ブース訴求、フォローメールといったさまざまな場面で文章が必要になります。
生成AIは、これらの文章をゼロから手作業で作る負担を減らし、企画や戦略に時間を割きやすくするアシスタントになり得ます。
重要なのは、出展目的・ターゲット・訴求軸を整理したうえで、プロンプトに落とし込むこと、そして、生成AIが出した案をそのまま使うのではなく、展示会マーケティングの方針や自社のブランドに合わせて、人間が最終調整することです。
小さな範囲から試し、うまくいったプロンプトやテンプレートをチームで共有していくことで、生成AIは展示会マーケティングにおける「共通言語」として機能するようになります
生成AIマーケティングの基本や、展示会準備のチェックリストとあわせて運用していくことで、より一貫性のあるオフラインイベント施策を実現できるはずです。
シーサイドでは、生成AIツールの活用に関するご相談も受け付けております。
お困りやご相談がありましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
