SIPSモデルとは? デジタル時代の消費行動を読み解く新フレームワークを徹底解説

現代のマーケティングにおいて、消費者の行動はかつてないほど複雑化しています。
インターネットの普及、特にSNSの台頭は、私たちが商品やサービスを認知し、購入に至るまでのプロセスを大きく変えました。
もはやテレビCMや新聞広告といった一方的な情報発信だけで、消費者の心を動かすことは難しくなっています。

このような変化に対応するために登場したのが、電通の本間充氏が提唱するSIPSモデルです。
SIPSモデルは、デジタル時代の新しい消費行動を「Sympathize(共感)」「Identify(確認・特定)」「Purchase(購入・参加)」「Share(共有・拡散)」という4つのプロセスで説明するフレームワークです。

従来の代表的なマーケティングモデルであるAIDMA(注意・関心・欲求・記憶・行動)やAISAS(注意・関心・検索・行動・共有)が主に購買行動のプロセスを説明していたのに対し、SIPSモデルは、SNSを通じて生まれる「共感」と、その後の「共有」による広がりを重視しています。

本記事では、SIPSモデルを構成する4つのプロセスの詳細から、具体的な活用法、AISASやAIDMAとの違いについて、詳しく解説いたします。

目次

SIPSモデルとは? 4つのプロセスを徹底解説

SIPSモデルは、SNSを起点とした消費者の購買行動プロセスを、より正確に捉えるために開発されました。
ここでは、SIPSモデルの各プロセスを詳しく解説していきます。

Sympathize(共感)フェーズ:顧客の心を掴む第一歩

SIPSモデルのスタートは「共感」です。これは従来のモデルにはなかった、新しい概念です。

現代の消費者は、企業からの一方的なメッセージよりも、友人やインフルエンサー、あるいは見知らぬ誰かの投稿に共感して、商品やサービスに興味を持つことが増えました。
この共感は、単なる「知る」という受動的な行為ではなく、感情的な結びつきを伴う能動的な行動です。

このフェーズでは、企業が発信する情報が、消費者のユーザーインサイトや価値観にどれだけ響くかが問われます。
単に商品の特徴を伝えるだけでなく、その商品がもたらす「体験」や「世界観」をストーリーとして語ることが、共感を生むための鍵となります。

Identify(確認・特定)フェーズ:共感から購買意欲へ

共感によって興味を持った消費者は、次にその商品やサービスが「自分にとって本当に価値があるものか」を確認・特定しようとします。
従来の「検索」に加え、このフェーズではSNS上でのハッシュタグ検索や、UGC(User Generated Content)、つまり他のユーザーが投稿した写真やレビュー、口コミを重視する傾向があります。

企業が発信する情報だけでなく、消費者が自ら能動的に情報収集を行い、その商品・サービスが持つ本質的な価値を判断するプロセスです。
このフェーズで重要なのは、消費者が求める情報を、信頼性の高い形で提供することです。

Purchase(購入・参加)フェーズ:体験価値の提供

Identifyフェーズを経て、購買意欲が高まった消費者は、実際に商品やサービスを購入・参加します。
このフェーズでは、単に取引を完了させるだけでなく、その顧客体験全体が重要になります。
スムーズな購入手続き、迅速な配送、丁寧なカスタマーサポートなど、購入後の体験が次の共感や共有に繋がるためです。

特に、オンラインとオフラインが融合する現代においては、ECサイトでの購買体験だけでなく、実店舗での接客、イベントへの参加といった様々な顧客体験を総合的にデザインすることが求められます。

Share(共有・拡散)フェーズ:新たな共感を生み出すサイクル

商品やサービスを購入した消費者は、その体験をSNSを通じて他者と共有・拡散します。
この行動は、単なる「口コミ」を超え、新たな共感を生む起点となります。
良い体験をした消費者のレビューや投稿は、フォロワーや友人を通じて広がり、SIPSモデルの最初のフェーズである「Sympathize」へとつながる循環を生み出します。

このフェーズを促すことは、企業にとって非常に重要です。
UGCを積極的に活用したり、ファン化した顧客をコミュニティに巻き込んだりすることで、ブランドへのエンゲージメントを高め、持続的な成長を促すことができます。

SIPSモデルをマーケティングに活用する方法

SIPSモデルを理解することは、現代のマーケティング戦略を立てる上で不可欠です。
ここでは、SIPSモデルを具体的な施策に落とし込むための方法を解説します。

コンテンツ施策へのSIPSモデルの応用

SIPSモデルの「共感」フェーズを意識したコンテンツ作りが重要です。
商品の機能説明だけでなく、その商品がもたらす「豊かな暮らし」や「問題解決」のストーリーを伝えることで、読者の感情に訴えかけます。
ブログやSNS、動画コンテンツなどを活用し、共感を呼ぶメッセージを発信しましょう。

また、「共有」を促すために、ユーザーが参加しやすい企画やキャンペーンを実施することも有効です。
ハッシュタグをつけて投稿してもらう、感想を募集するなど、ユーザーを巻き込むことで、自然なUGCの生成を促し、ブランドのファン化を促進します。

ソーシャルメディアにおけるSIPSモデルの実践

SIPSモデルは、SNSマーケティングと非常に親和性が高いフレームワークです。
SNSでは、企業からの発信だけでなく、顧客からのフィードバックや質問にも積極的に応えることで、「対話」を通じて共感と信頼関係を築くことができます。

インフルエンサーとのコラボレーションも効果的です。
彼らのフォロワーは、共感によってその商品・サービスに興味を持ち、購買へと繋がりやすいためです。
また、顧客が投稿したUGCを公式アカウントで紹介するなど、共有の輪を広げる工夫も重要です。

顧客ロイヤルティを高めるためのSIPSモデル

SIPSモデルの最終目標は、単発的な購入で終わらせず、顧客との長期的な関係を築き、リピーターやブランドの「ファン」を増やすことです。
購入後の体験を大切にし、顧客が共有したくなるような付加価値を提供しましょう。

たとえば、購入者限定のコミュニティを作成して、特別な情報を提供したり、イベントを開催したりすることで、顧客は「単なる消費者」から「ブランドの仲間」という意識を持つようになります。
このようなエンゲージメントの高い顧客は、新たな共感と共有を生み出す強力な存在となります。

SIPSモデルとAIDMA・AISASモデルの決定的な違い

SIPSモデルの理解を深める上で、AIDMAやAISASといった従来の購買行動モデルとの違いを明確にすることは不可欠です。
これらのモデルは、それぞれ特定の時代のマーケティング環境を反映していましたが、現代の消費行動には対応しきれない部分が出てきました。

AIDMAモデルは、テレビや新聞といったマス広告が中心だった時代に考案されました。
「Attention(注意)」→「Interest(関心)」→「Desire(欲求)」→「Memory(記憶)」→「Action(行動)」という一方通行のプロセスが特徴です。
企業が情報を発信し、消費者がそれを受け取るという「Push型」のマーケティングを前提としています。

AISASモデルは、インターネットが普及し始めた時代に登場しました。
「Attention(注意)」→「Interest(関心)」→「Search(検索)」→「Action(行動)」→「Share(共有)」というプロセスで、消費者が自ら情報を検索するという能動的な行動が加わった点が大きな違いです。
しかし、このモデルは、SNSが主流となる前の段階での考え方であり、共感を起点とした行動変化は十分に捉えられていませんでした。

これに対し、SIPSモデルは、AIDMAやAISASにない「Sympathize(共感)」という新たなフェーズを最初のプロセスに置いています。
これは、情報の起点が一方向の広告ではなく、SNS上の口コミやインフルエンサー、あるいは企業が発信する共感を呼ぶコンテンツへと変化したことを示しています。
また、AISASの「Share」が単なる口コミに留まるのに対し、SIPSモデルの「Share」は、再び「Sympathize」へと繋がる循環構造になっている点が最も重要なポイントです。

つまり、SIPSモデルは、顧客心理をより深く洞察し、消費者がデジタルマーケティングの主役となる現代の環境に最適化されたフレームワークと言えるのです。

SIPSモデル実践のための具体的なヒント

SIPSモデルを机上の空論で終わらせず、実際にビジネスに活かすためには、具体的なアクションプランが必要です。ここでは、各フェーズで取り組むべき実践的なヒントをご紹介します。

Sympathize(共感)フェーズでのヒント

企業文化や理念を発信

 商品のスペックだけでなく、企業が大切にしている価値観や社会貢献への取り組みをSNSで発信することで、共感する顧客を増やします。

共感を呼ぶストーリーコンテンツの作成

商品開発の裏側や、顧客のリアルな声を集めたインタビュー記事など、感情に訴えかけるストーリーを積極的に発信しましょう。

Identify(確認・特定)フェーズでのヒント

UGCのモニタリングと活用

 顧客が自社の製品についてどのような投稿をしているかを定期的にチェックし、良い口コミやレビューは公式アカウントでシェアするなどして、信頼性の向上に繋げます。

質問に素早く回答

SNSやカスタマーサポートチャネルを通じて寄せられる顧客からの質問や疑問に、迅速かつ丁寧に回答することで、購買を迷っている顧客の背中を押します。

Purchase(購入・参加)フェーズでのヒント

購入体験の最適化

ECサイトの使いやすさ、支払い方法の多様性、迅速な配送など、購入プロセス全体をスムーズにすることで、顧客の満足度を高めます。

購入後のコミュニケーション

 感謝のメッセージや、関連商品のレコメンドをメールで送るなど、購入後も顧客との関係を維持する努力を惜しみません。

Share(共有・拡散)フェーズでのヒント

ハッシュタグキャンペーンの実施

 顧客が投稿したくなるような魅力的なハッシュタグを企画し、UGCの生成を促します。

ファンコミュニティの運営

限定イベントや情報提供を通じて、熱心なファン同士が交流できる場を提供し、ブランドへのエンゲージメントをさらに高めましょう。

まとめ SIPSモデルが描く未来のマーケティング

いかがでしたか?
SIPSモデルの基本から、4つのプロセスの詳細、従来のマーケティングモデルとの違い、具体的な活用方法やヒントまで解説いたしました。

SIPSモデルは、情報過多の現代において、消費者がいかにして商品やサービスと出会い、関係性を深めていくかを顧客心理の観点から鮮やかに描き出しています。
このフレームワークは、従来のAIDMAやAISASが説明しきれなかった共感と共有の重要性を明確にし、企業が顧客と双方向のコミュニケーションを築くための指針を与えてくれます。

SIPSモデルは、「単に商品を売るだけでなく、顧客の心に寄り添い、共に価値を創造していく」というマーケティングの未来を私たちに示しているのです。

このフレームワークを理解し、実践することで、デジタルマーケティングの新たなステージへと進むことができるでしょう。

シーサイドでは、デジタルマーケティングやDXにまつわる課題解決の実績も数多くございます。
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