Agentforceを導入しても、Salesforceに登録した情報を正しく参照しない、古い情報を回答に使う、似た質問への回答が安定しないといった問題が起こることがあります。Agentforceの回答精度を高めるには、データを増やすだけでなく、回答に必要な情報の正確性・完全性・最新性・一貫性を維持しなければなりません。
本記事では、Salesforceデータとナレッジの整備方法に加え、権限、指示、アクション、テストの確認方法も解説します。
Agentforceの回答精度とSalesforceデータの関係
Agentforceは、Salesforceのレコードやナレッジ、ファイルなどを回答の根拠として利用できます。ただし、情報が存在するだけで、自動的に正しく利用されるわけではありません。
まずは、Agentforceの回答精度とSalesforceデータの関係について詳しく解説します。
Agentforceは登録された情報を基に回答を組み立てる
取引先、商談、ケース、商品、契約などを取得するように設定すれば、Agentforceは顧客の状況や対応履歴を踏まえて回答できます。ナレッジ記事、FAQ、規約なども回答の根拠になります。
RAG(検索拡張生成)は、質問に関連する情報を検索し、その内容を生成処理へ加える仕組みです。情報源が古い、または矛盾していれば、検索が正常でも回答は不正確になり得ます。
データ量よりも正確性・最新性・一貫性が重要
データを増やせば、必ず回答精度が高まるわけではありません。旧版と新版の混在、顧客レコードの重複、項目間の不整合があれば、回答の根拠を絞り込みにくくなります。
事実との一致、必要項目の充足、最新性、表記の統一を確認し、利用目的に合う情報を選別します。
データ整備だけで回答精度が決まるわけではない
正しいデータでも、Agentforceがアクセスできなければ利用できません。検索範囲や指示が不適切な場合も、期待した回答からずれる可能性があります。
適切な回答を得るためには、元データ、検索結果、権限、サブエージェント、指示、アクションを分けて確認する必要があります。
Agentforceの回答精度を下げるSalesforceデータの問題
Salesforceのデータ不備には、古い情報、欠損、重複、表記揺れ、関連付けの不足などがあります。
ここでは問題の種類を分けて確認します。
古い情報や更新されていない情報が残っている
終了したサービス、変更前の料金、過去の契約条件が現在の情報と同じ状態で残っていると、Agentforceが古い内容を回答に使う可能性があります。
過去データをすべて削除する必要はありません。有効・無効の区分、適用開始日、終了日、最終更新日などを使い、現在値と履歴を区別します。
空欄や入力不足によって回答の前提が欠けている
顧客区分、契約状況、利用商品などが空欄では、回答に必要な前提を取得できません。情報が不足したままでは、回答が曖昧になり、実際の状況から外れる可能性があります。
空欄が未入力なのか、確認中なのか、該当なしなのかも選択肢で区別するようにしましょう。
重複や表記揺れによって情報が分散している
同じ顧客が複数登録されると、活動履歴や商談が別のレコードへ分散し、一部だけを参照した回答になりかねません。
法人格の有無、全角・半角、正式名称と略称、旧名称と新名称などを整理します。既存データを名寄せし、重複ルールや入力形式で再発を防ぎます。
レコードの関連付けや項目の意味が曖昧
取引先、商談、契約、ケース、商品などが存在していても、レコード同士の関係が整理されていなければ、必要な情報を取得しにくくなります。会社名や商品名を自由記述だけで管理すると、表記揺れによって別の情報として扱われる可能性もあります。
同じ意味の項目が複数ある場合は、正しい情報源とする項目を決めます。項目の用途、更新条件、管理責任者を明確にし、利用するアクションやプロンプトが必要な関連情報を取得できるかも確認します。
Agentforce向けにSalesforceデータを整備する基本手順
組織内の全データを一度に修正する必要はありません。Agentforceに任せる業務と想定質問を起点に、回答へ必要なデータを絞り込み、優先順位を付けて進めます。
Agentforceに回答させる業務と必要なデータを整理する
Agentforceが回答または実行する業務を明確にし、想定質問ごとに必要なオブジェクト、項目、ナレッジを洗い出します。回答に使わない情報や、参照させてはいけない情報も区別します。
想定質問から逆算すれば、整備対象を必要以上に広げずに済みます。
正しい情報を保持する項目を決める
同じ内容を保持する項目が複数ある場合は基準項目を決め、現在値と履歴、正式情報と担当者メモなどを分けます。
項目ごとに入力内容、更新時期、空欄を許可する条件、更新責任者を定めます。Agentforce専用の項目を増やすのではなく、通常業務の中で正しい値を維持できる設計にします。
重複・欠損・表記揺れを解消する
重複レコードの統合時は、活動履歴、商談、ケース、関連ファイルなどを確認し、残すレコードと値の基準を決めます。
欠損データは、回答への影響が大きい項目から補完します。確認できない情報を推測して入力すると別の誤回答を生むため、「不明」などの状態を明示します。
会社名、商品名、単位、日付形式なども統一します。
レコード間の関連付けを見直す
Agentforceが顧客の状況を把握するには、取引先、取引先責任者、商談、商品、契約、ケースなどの関係を整理する必要があります。
同じ情報を複数の場所へ手入力する方法は避け、参照関係、数式項目、自動更新などで入力元を集約します。ただし、受注時点の金額や契約条件など、履歴として固定すべき値まで現在値で上書きしないようにします。
関連付けを整えるだけで、すべての情報を自動取得できるわけではありません。利用するアクションやプロンプトが、必要なオブジェクト、項目、関連情報を取得できるかも確認します。
入力規則や選択リストでデータのばらつきを抑える
必須項目、入力規則、選択リスト、重複ルール、自動更新などを組み合わせ、問題の再発を防ぎます。入力者の判断だけに依存せず、同じ条件では同じ形式のデータが入る仕組みを作ります。
ただし、入力時点で確定できない項目まで必須にすると、仮の値や意味のない値が入力される可能性があります。必須化する項目は、その時点で確実に入力でき、回答に必要なものへ絞ります。
更新責任者と点検ルールを決める
データ品質を維持するため、項目ごとの更新部門、更新時期、点検頻度を決めます。重複レコード数、重要項目の欠損、長期間更新されていないレコードなどをレポートで確認します。
業務範囲を変更するときは、必要なデータ、検索対象、項目定義、更新ルールも見直します。
ナレッジやファイルの整備も回答精度を左右する
Salesforceレコードが整っていても、Agentforceが参照するナレッジ記事やファイルに問題があれば、回答は安定しません。文章で管理する情報にも更新ルールと検索対象の基準が必要です。
古い文書や内容が矛盾する文書を整理する
旧版と新版のマニュアルが同時に検索対象へ入っている、複数のFAQで異なる回答を書いている、終了した制度の資料が残っているといった状態を解消します。
文書には、対象商品、適用期間、更新日、管理責任者を設定します。履歴として保管する文書と、現在の回答に使う文書は分けて管理します。
一つの文書で扱うテーマと対象範囲を明確にする
一つの文書へ複数の論点を詰め込みすぎると、検索された一部分だけでは前提や例外が伝わらない場合があります。タイトルから内容を判別できるようにし、対象商品、対象者、適用条件、例外条件を本文内で明記します。
「これ」「その場合」などの指示語や主語の省略も減らし、文書の一部分だけを読んでも内容を理解できる文章に整えます。
用語・商品名・表記ルールを統一する
Salesforceレコードとナレッジで異なる商品名を使っている場合は、正式名称、略称、旧名称の関係を整理します。部門ごとに同じ言葉を別の意味で使っている場合は、用語の定義も統一します。
検索や条件判定に使う重要語は共通化します。
データを整備しても回答精度が上がらない場合の確認項目
データ修正後も回答が改善しない場合は、Agentforceがその情報を取得し、利用できる状態になっているかを確認します。元データを繰り返し修正する前に、アクセス権限、検索範囲、サブエージェント、指示、アクションを分けて調べます。
Agentforceが必要なデータへアクセスできるか
オブジェクト権限、項目レベルセキュリティ、共有設定、レコードアクセス、Salesforce Knowledgeの閲覧権限、データカテゴリなどを確認します。必要な権限がなければ、正しいデータが存在していても回答へ利用できません。
一方、必要以上に権限を広げると、回答に利用させるべきではない情報まで取得する可能性があります。担当させる業務を基準に、必要なデータだけへアクセスできる状態を作ります。
検索対象と検索範囲が適切か
必要なナレッジやファイルが検索対象へ含まれているか、無関係な情報源まで含まれていないかを確認します。元データが間違っているのか、必要なデータが検索されていないのか、検索結果は正しいものの回答の組み立てがずれているのかを分けて調べます。
検索結果に問題があればデータソースや検索条件を、回答生成に問題があれば指示やプロンプトを見直します。
サブエージェントの指示とアクションが質問に合っているか
Agentforceが担当する業務範囲が曖昧な場合、どの情報を使い、どの処理を実行するべきかを選びにくくなります。必要なデータを確認する指示がない、複数の指示が矛盾している、必要なアクションが利用できないといった問題も回答へ影響します。
データが正しくても回答が改善しない場合は、質問がどのサブエージェントで処理され、どの指示とアクションが使われたのかを確認します。
Agentforceの回答精度はテストと改善を繰り返して高める
データと設定を修正した後は、実際の質問を使って回答を検証します。1つの質問で期待どおりの回答が出ても、表現や条件が変われば結果も変わる可能性があります。
複数のテストケースを用意し、修正前後を比較します。
想定質問と期待する回答をあらかじめ決める
実際の利用場面を基に想定質問を整理し、質問ごとに必要な情報と期待する回答を決めます。正しい回答だけでなく、情報不足時に確認を求める条件、回答してはいけない内容、人の確認が必要な処理も含めます。
質問の言い回しや条件を変え、判断が難しい質問への対応も確かめます。
誤回答の原因を分類して修正する
誤回答が出た場合は、元データの誤り、必要項目の欠損、古い情報、検索対象の不足、権限不足、指示の曖昧さ、アクションの不足などに原因を分類します。
原因を特定しないままデータや文書、指示を追加すると、重複や矛盾が増える可能性があります。質問の解釈、情報検索、回答生成、アクション実行のどの段階で期待した結果から外れたのかを確認します。
修正後も同じ条件で再テストする
修正前と同じ質問で再テストし、回答が改善したかを比較します。関連する別の質問も確認し、修正によって以前は正しかった回答が崩れていないかを確かめます。
利用環境で提供されているAgentforceのテスト機能を使えば、複数のテストケースと履歴を管理できます。(※Agentforce StudioのTesting Centerはベータ提供を含むため、自社環境の提供状況を確認してください)
まとめ
Agentforceの回答精度を高めるには、Salesforceのデータ量を増やすのではなく、回答に必要な情報を選び、正確性・完全性・最新性・一貫性を維持する必要があります。重複、欠損、表記揺れ、古い情報、関連付けの不足を解消し、ナレッジやファイルも同じ基準で整えます。
そのうえで、アクセス権限、検索範囲、サブエージェント、指示、アクションを確認し、想定質問を使って継続的にテストします。データ整備を一度きりの作業にせず、Agentforceの利用範囲と業務ルールの変化に合わせて更新することが、回答品質を維持する基本です。
シーサイドでは、SalesforceをはじめとしたSFAの導入設計からAIを活用した業務改善まで幅広く対応させていただいております。
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