Salesforce AIの活用方法|営業プロセスのどこまでAgentforceに任せられるか

SalesforceでAIを活用する方法は、メール文面の作成や商談内容の要約だけではありません。

Agentforceは、Salesforceが提供する自律型のAIエージェントプラットフォームです。
参照可能なデータを基に次の行動を考え、設定されたアクションと権限の範囲内でタスク作成やレコード更新などを実行できます。Salesforce内のデータだけでなく、接続した外部データやAPI、業務フローも処理に組み込めます。

ただし、営業プロセスのすべてを同じ水準で自動化できるわけではありません。初回連絡、商談情報の整理、見積候補の作成、価格交渉では、必要な情報や判断の複雑さ、顧客への影響が異なります。

Agentforceを営業へ取り入れる場合は、営業プロセスごとに「情報を提示する」「担当者の確認後に処理する」「条件を満たせば自動で処理する」「人が最終判断する」という役割を整理する必要があります

本記事では、リード対応からクロージングまでの流れに沿って、Agentforceへ任せられる範囲を解説します。

目次

Agentforceは営業支援から営業プロセスの実行へ範囲を広げる

生成AIを文章作成や要約のために単体で利用する場合、AIが作成した内容を営業担当者が確認し、その後の操作を人が行います。
Agentforceでは、情報の生成だけでなく、設定したアクションを使って後続の処理まで一連の流れとして構成できます。

まずは、生成AIによる支援とAgentforceによる実行の違いから、Agentforceの実行範囲について詳しく整理します。

生成AIによる支援とAgentforceによる実行の違い

生成AIを単体で利用する営業支援では、AIが商談内容を要約した後に営業担当者がタスクを登録する、AIが作成したメール文案を担当者が確認して送信するといった流れになります。

Agentforceでは、企業が設定したアクションを使い、情報取得後の処理までつなげられます。
たとえば、商談情報を要約して担当者へ提示するだけでなく、条件に応じて次回タスクを作成し、必要な担当者へ通知する流れを構成できます。標準アクションに加えて、企業固有の処理も追加できます。

この違いにより、Salesforce AIの検討対象は「何を生成できるか」から「営業プロセスのどこまで進められるか」へ広がります。

営業で見るべきなのは機能数ではなく自律度

情報検索、要約、対応案の提示、メール送信、レコード更新と段階が進むほど、Agentforceが処理できる範囲は広がります。一方、自律的に実行する範囲が広がるほど、誤った処理が顧客対応や商談データへ与える影響も大きくなります。

そのため、営業部門とSalesforce管理者は、営業業務ごとに、Agentforceを情報提示にとどめるのか、担当者の確認後に実行させるのか、一定の条件を満たした場合に自動で実行させるのかを決める必要があります。

Agentforceの営業活用で重要なのは、多くの機能を使うことではなく、業務の性質と誤処理時の影響に合わせて自律度を設定することです。

リード対応では継続処理をどこまで任せるかを決める

リード対応では、初回連絡、返信確認、質問への回答、追加フォロー、営業担当者への引き継ぎが連続します。対象件数が多く、一定の条件に沿って進めやすいため、Agentforceを活用しやすい工程です。

ここでは、リード対応におけるAgentforceの活用について紹介します。

情報整理から初回連絡までをつなげる

Agentforceは、リードに登録された会社名、役職、関心分野、流入経路など、参照を許可された情報を連絡内容の作成に利用できます。

Salesforceは、この用途向けにAgentforce EngagementのLead Nurturingエージェントテンプレートを用意しています。
Lead Nurturingは、見込み客への初回連絡、追加フォロー、返信への対応、質問への回答、条件を満たした見込み客と営業担当者の接続を担います。

ただし、Agentforceが自社に適した対象者や連絡条件を決めるわけではありません。営業部門は、対象リードの条件、連絡に使う情報、追加連絡の間隔を決める必要があります。

返信対応では回答範囲と引き継ぎ条件を定める

見込み客からの返信には、資料請求、サービス内容の確認、料金、契約条件、個別要望などが含まれます。定型的な質問は、回答に利用するデータライブラリやナレッジを設定することで対応できます。データライブラリには、エージェントが質問への回答やタスクの実行に使用する情報を登録します。

一方、価格交渉や個別条件を含む相談には、営業担当者の判断が必要です。営業部門は、Agentforceが回答できる質問と、担当者へ引き継ぐ質問をあらかじめ分けます。回答範囲が曖昧なまま顧客対応を任せると、会社としてどこまで回答してよいのかが不明確になります。

リード対応では、対象の選定、初回連絡、返信対応、追加フォロー、営業担当者への引き継ぎまでを一つのプロセスとして捉え、Agentforceが担う範囲を決める必要があります。

商談管理では記録の整理と営業判断を切り分ける

商談管理には、活動履歴の確認、商談内容の要約、次回対応の登録、商談フェーズの更新、受注見込みの評価などが含まれます。これらを一括して扱うと、Agentforceへ任せやすい処理と、人が判断すべき処理の境界が曖昧になります。

商談管理におけるAgentforceの活用と、注意点について見ていきましょう。

商談情報の検索や要約は任せやすい

商談前には、取引先情報、過去の活動、商談メモ、関連商品、次回予定などを確認します。Agentforceは参照可能なデータを使い、商談の経緯や未確認事項を整理して営業担当者へ提示できます。

Agentforce Sales Coachも商談準備を支える機能です。
Sales Coachは、生成AIとCRMデータを使ったフィードバックや対話型のロールプレイを通じて、営業担当者の顧客対応を支援します。商談を代行するのではなく、担当者が顧客と向き合う前の準備を補います。

タスク作成と商談フェーズの変更を分ける

次回対応日が決まった後にタスクを作成する、必須項目の不足を担当者へ通知するなど、開始条件と処理内容が明確な業務はAgentforceへ任せやすい領域です。

一方、商談フェーズや受注確度には、顧客の温度感、競合状況、社内の意思決定などが関係します。営業担当者だけが把握している情報がある場合、Agentforceによる自動更新は実態とずれる可能性があります。また、レコードを更新するには、更新アクションだけでなく、対象レコードや項目に対する権限も必要です。

営業部門は、記録の作成や不足情報の通知をAgentforceへ任せ、商談の見通しに関わる項目は担当者の確認後に更新するなど、処理ごとに自律度を変える必要があります。

提案・見積では作成支援と正式提示を分ける

提案や見積の工程には、顧客課題の整理、商品情報の検索、提案内容の作成、価格の算出、社内承認、顧客への正式提示が含まれます。
Agentforceが案を作成できることと、その内容を会社として顧客へ提示できることは同じではありません。

ここでは、提案・見積もり段階におけるAgentforceの活用と、人との役割分担について明確にします。

提案内容の整理や下書きに活用する

Agentforceは、商談情報や過去のやり取りを参照し、顧客が重視している課題、未確認の条件、提案に含めるべき商品情報などを整理できます。営業担当者は、その情報を基に提案書やフォローアップメールの下書きを作成できます。

ただし、Agentforceが参照できるデータソースに含まれていない情報や、営業担当者だけが把握している顧客事情は、提案内容へ反映されません。AgentforceはSalesforce外のデータにも接続できますが、接続されていない情報まで自動的に取得することはできません。

営業担当者は、Agentforceが作成した案をそのまま確定せず、顧客の状況や未反映の情報を確認します。

見積候補の作成と正式な条件確定を分ける

価格表や割引ルールをSalesforce上で管理し、見積情報の取得や計算に必要なアクション、Flow、API連携などを設定すれば、Agentforceを見積候補の作成に利用できます。価格情報が登録されているだけで、見積作成の処理まで自動的に完成するわけではありません。

また、値引き、支払条件、契約期間、特別対応などには、利益率や承認権限が関係します。営業部門は、Agentforceが作成する見積候補と、承認後に顧客へ提示する正式見積を分ける必要があります。

一定の条件内では処理を進め、条件を外れる場合は承認者へ引き継ぐなど、価格と契約への影響に応じて処理を止める場所を決めます。最終条件を確定する主体は営業担当者や承認者です。

交渉・クロージングでは判断の代行より準備を任せる

交渉やクロージングでは、顧客の反応、競合の提案、社内の承認状況、契約上の例外など、定型的な条件だけでは処理しにくい要素が増えます。

この工程では、Agentforceに交渉そのものを任せるのではなく、営業担当者が判断するための情報整理を任せます。

交渉前の論点整理と確認漏れの防止に利用する

Agentforceは、過去のやり取り、顧客からの要望、未回答の質問、社内確認が必要な条件を整理できます。営業担当者は、交渉前に確認すべき論点を把握し、必要な承認や資料を準備できます。

Sales Coachを使えば、想定される反論への対応や説明方法をロールプレイで確認できます。ここでもAgentforceの役割は、顧客との合意を代行することではなく、交渉前の準備を支えることです。

契約条件や例外対応の最終判断は人が担う

値引き、契約条項、支払条件、導入範囲などの変更は、会社の収益や責任に影響します。承認に必要なアクションやFlowを設定すれば、Agentforceを承認ルートの案内、必要情報の収集、申請処理の開始に利用できます。ただし、最終条件を決定する主体にはなりません。

営業担当者や承認者は、Agentforceが整理した情報を確認し、会社として受け入れられる条件かを判断します。交渉・クロージングでは、誰が最終判断を行い、どこでAgentforceの処理を止めるのかを明確にすることが優先されます。

Agentforceを組み込むと営業プロセスの管理単位が変わる

営業プロセス別に任せる範囲を決めても、現在の業務が担当者や商談フェーズだけで管理されていれば、Agentforceは次に行う処理を安定して選べません。

営業部門とSalesforce管理者は、営業活動をタスクと条件の単位で表現する必要があります。

担当者単位ではなくタスク単位で役割を決める

1つの商談には、情報検索、要約、メール作成、送信、タスク登録、項目更新、承認申請など、複数の処理が含まれます。
Agentforceを活用する際は「この商談をAgentforceへ任せるか」ではなく、「どの処理をAgentforceへ任せるか」と考えます。

タスク単位で役割を決めれば、情報整理はAgentforce、顧客への送信は営業担当者、契約条件は承認者という分担が可能になります。

商談フェーズだけでなく行動条件を定める

「提案中」「交渉中」というフェーズだけでは、Agentforceが次に何をすべきかを特定できません。最終活動日から一定期間が経過した、顧客から返信がない、必要項目が登録された、承認が完了したなど、処理を開始する条件が必要です。

営業部門は業務上の判断基準を整理し、Salesforce管理者はその基準を項目やフローなどで扱える形にします。

両者が協力することで、Agentforceは営業プロセスの状態に応じて次のアクションを選べます。

営業情報を次の行動に使える形で記録する

Salesforceに情報が登録されていても、その内容が次の行動条件として使えなければ、Agentforceによる処理にはつながりません。顧客の検討状況、次回対応日、対応不要の理由、引き継ぎ条件などを、後続の処理で参照できる形にする必要があります。

自由記述も情報源にはなりますが、担当者ごとに書き方が異なり、重要な判断がメモの中だけにある状態では、安定した条件として使いにくくなります。営業部門とSalesforce管理者は、Agentforceに任せたい処理から逆算し、必要な情報をどの項目へ、どの形式で記録するかを決めます。

まとめ

Agentforceは、参照可能なデータと設定されたアクションを組み合わせ、付与された権限の範囲内で営業プロセスの一部を実行できます。ただし、任せられる範囲は営業工程によって異なります。

リード対応では、対象条件が明確であれば初回連絡や継続フォローまで進めやすくなります。商談管理では、情報検索や要約、タスク作成を任せやすい一方、商談フェーズや受注確度には営業担当者の判断が必要です。提案・見積では下書きや見積候補と正式提示を分け、交渉・クロージングでは最終判断ではなく準備や承認手続きの支援を任せます。

Agentforceの営業活用で重要なのは、利用する機能を増やすことではありません。営業プロセスごとに処理を分解し、情報提示、担当者確認後の実行、自動実行のどこまで任せるかを決めることです。そのうえで、営業担当者、Agentforce、承認者の役割をタスク単位で整理することが、実務に合ったSalesforce AIの活用につながります。


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