営業メールは、顧客名や会社名、商談状況を確認し、相手に合わせて内容やトーンを調整する必要があるため、作成に時間がかかります。
SalesforceのPrompt Builderを活用すると、営業メールの作成ルールを「プロンプトテンプレート」として設計し、Salesforceに登録されているデータを組み合わせてメールの下書きを生成できます。単に生成AIへその都度指示を入力するのではなく、組織で再利用できる形にすることがポイントです。
本記事では、Prompt Builderの基本的な仕組みから、Sales Emailテンプレートを使った営業メールの作成方法、テンプレート設計の考え方、運用時の注意点まで解説します。
SalesforceのPrompt Builderとは
Prompt Builderは、Salesforce上で生成AIに渡す指示をプロンプトテンプレートとして作成し、テスト・再利用するための機能です。固定の指示だけでなく、Salesforceに保存されているレコード情報も組み込めます。
営業メールであれば、「どのような目的のメールを書くか」「どのトーンにするか」といった共通ルールをテンプレート化し、顧客名や会社名など相手ごとに変わる情報をSalesforceから取得して利用できます。
プロンプトを毎回入力する方法との違い
一般的な生成AIでは、その都度プロンプトを入力します。一方、営業担当者ごとに自由に指示を作る運用では、内容や粒度に差が生まれ、生成結果もばらつきやすくなります。
Prompt Builderでは、目的、利用する情報、トーン、出力条件などをあらかじめ定義できるため、組織として一定の考え方で生成AIを使いやすくなります。
営業メールでは「Sales Email」テンプレートを利用する
営業メールの作成には、プロンプトテンプレート種別の「Sales Email」を利用します。Sales Emailテンプレートでは、Salesforceのレコードデータや顧客との関係に関する情報を活用しながら、パーソナライズしたメールを生成できます。
受信者となるリードや取引先責任者などを設定し、そのレコードや関連情報をプロンプトに組み込むことで、同じテンプレートでも送信先に応じて内容を変えられます。
Prompt Builderで営業メールを作成する流れ
Prompt Builderで営業メールを作る場合は、Sales Email用のプロンプトテンプレートを作成し、生成AIへの指示とSalesforceのデータを組み込みます。その後、プレビューで出力を確認し、問題がなければテンプレートを有効化します。
営業担当者が実際に利用するには、Sales Emailsの有効化や必要な権限設定も必要です。自社のSalesforce環境で利用条件を満たしているか確認したうえで設定を進めましょう。
1.Prompt Builderから新しいテンプレートを作成する
Salesforceの[設定]を開き、クイック検索で「Prompt Builder」を検索します。Prompt Builderを開いたら[New Prompt Template]から新しいテンプレートを作成し、Prompt Template Typeには[Sales Email]を選択します。
2.テンプレート名や受信者を設定する
続いて、テンプレート名、API参照名、説明、受信者などを設定します。テンプレート名は、営業担当者が用途を判断しやすい名称にします。
「営業メール01」のような名前より、「初回連絡」「商談後フォロー」「資料送付後フォロー」のように目的が分かる名称の方が運用しやすくなります。
Recipientではメールの受信者として利用するオブジェクト種別を設定し、必要に応じてRelated Objectを指定して、メール生成時に利用する関連情報を定義します。
3.営業メールを生成する指示文を作成する
基本設定が終わったら、生成AIに渡す指示文を作成します。ここで重要なのは、「営業メールを書いてください」だけで終わらせないことです。
メールの目的、誰から誰に送るのか、何を伝えるのか、どのようなトーンにするのか、どの程度の長さにするのかを具体化します。商談後のフォローメールであれば、「商談へのお礼」「次のアクション」「丁寧で簡潔な文体」などを明示します。
さらに、確認できない事実を補完しない、提供されていない情報を推測しないといった制約も加えると、運用時のリスクを抑えやすくなります。
4.Salesforceのデータをプロンプトに組み込む
Prompt Builderでは、Salesforceに保存されているデータをプロンプトの材料として利用できます。
受信者名や会社名をテンプレートへ直接書き込むのではなく、RecipientやSenderなどのリソースや差し込み項目を使って値を渡します。共通の指示はテンプレートに残し、顧客ごとに変わる情報をSalesforceから取得すれば、同じテンプレートを複数の顧客に再利用できます。
このように、生成AIが回答するための根拠や文脈となる情報を与える考え方を「グラウンディング」と呼びます。Prompt Builderでは差し込み項目のほか、必要に応じてFlowやApexなどを利用してデータを追加することもできます。
5.プレビューしてからテンプレートを有効化する
プロンプトを作成したら、実際のレコードデータを使って生成結果を確認します。指示文としては正しく見えても、生成すると文章が長すぎる、重要な情報が目立たない、表現が営業的すぎるといった問題が見つかる場合があります。
必要な情報が含まれているか、意図したトーンになっているか、不自然な表現がないか、参照データが適切かを確認し、結果を見ながらプロンプトを調整してから有効化します。
営業メールの品質を左右するプロンプトテンプレートの作り方
Prompt Builderでは、テンプレートを作ること自体よりも、「何をテンプレート化するか」の設計が重要です。営業活動として共通化すべき部分と、顧客ごとに変える部分を分けて考えます。
作り方のポイントは、次の通りです。
メールの目的を1つに絞る
1つのテンプレートに複数の目的を持たせすぎると、指示が複雑になり、どのようなメールを生成したいのかが曖昧になります。
初回連絡、商談後のフォロー、資料送付後の連絡、次回アポイントの案内など、用途ごとにテンプレートを分けると指示を明確にできます。まずは営業プロセスを整理し、繰り返し発生するメール作成業務からテンプレート化するとよいでしょう。
固定する情報と顧客ごとに変える情報を分ける
テンプレート設計では、「固定するもの」と「Salesforceから取得するもの」を明確に分けます。
固定するのは、メールの目的、基本構成、トーン、文章量、禁止事項などです。一方、顧客名、会社名、担当者に関する情報など、相手によって変わる内容はSalesforceのレコードから取得します。
この分け方ができていないと、特定の顧客にしか使えないテンプレートになったり、反対に指示が抽象的になりすぎたりします。「何を書くか」だけでなく、「どの情報を共通ルールとして持ち、どの情報をCRMから渡すか」を設計することが重要です。
出力条件を具体的に指定する
「丁寧に」「分かりやすく」とだけ指定しても、期待する文章が毎回得られるとは限りません。営業組織として求める条件を具体的に言語化します。
たとえば、「ビジネス向けの丁寧な文体にする」「結論を先に示す」「本文を簡潔にする」「強い売り込み表現を避ける」「提供された情報以外の事実を追加しない」といった指示です。
ただし、条件を増やせば必ず品質が上がるわけではありません。指示同士が矛盾すると期待した出力にならないため、必要な条件を優先し、プレビュー結果を見ながら調整します。
Salesforceデータを使う「グラウンディング」とは
この記事で扱うグラウンディングとは、Salesforceに登録されている顧客情報や関連情報を生成AIへ渡し、そのデータを踏まえて回答を生成させる考え方です。
顧客情報をプロンプトの根拠として利用する
生成AIは、Salesforceに登録されている個別顧客の情報を自動的に把握しているわけではありません。そこで、受信者や関連レコードなど必要なデータをプロンプトへ追加し、メール生成に必要な文脈を与えます。
顧客名を手入力するのではなく、受信者レコードを参照する仕組みにすれば、同じテンプレートを別の顧客に使った場合でも、そのレコードに応じた情報を渡せます。
固定文だけのテンプレートにしない
文章全体を固定して名前だけ差し替えるのであれば、従来のメールテンプレートでも対応できます。Prompt Builderでは、目的やルールを固定しつつSalesforceのデータを文脈として与えるため、「生成AIが判断するために必要な情報は何か」を考えることが重要です。
Prompt Builderを営業メールに活用するメリット
Prompt Builderでは、営業メール作成を組織として再利用可能な形に整えられます。
具体的なメリットは、次の通りです。
メール作成の負担を減らしやすい
共通の指示と必要なデータの取得方法をテンプレート化すれば、毎回ゼロから文章を組み立てる作業を減らせます。生成内容を下書きとして担当者が仕上げることで、確認工程を残しながら負担軽減を図れます。
営業メールの作り方を標準化しやすい
営業担当者それぞれが異なる指示を出すと、生成されるメールの内容にも差が出ます。組織共通のプロンプトテンプレートを用意すれば、メールの目的やトーン、盛り込む情報を一定のルールとして共有できます。
共通化すべき条件をテンプレートに持たせ、担当者による最終調整の余地を残すことが重要です。
営業メールを生成するときに注意したいポイント
Prompt Builderを使っても、生成されたメールが必ず正しいとは限りません。実務では、プロンプトだけでなく、データと確認フローまで含めて運用を設計します。
生成されたメールは送信前に確認する
AIが生成した文章は下書きとして扱い、顧客名や会社名に誤りがないか、商談状況と矛盾していないか、確認できない内容が追加されていないかを確認します。必要に応じて修正する工程を残すことが重要です。
Prompt Builderによってメール作成を効率化できても、最終的な送信内容までAIに任せるのではなく、人が確認する前提で運用することが大切です。
参照するSalesforceデータを整理する
生成結果の品質は、プロンプトだけで決まりません。参照するSalesforceデータが古い、不完全、入力方法が統一されていない状態では、その情報を使ったメールにも影響します。
どの項目をメール生成に利用するのかを決め、入力ルールや更新状況も確認しましょう。テンプレート設計とCRMデータの整備を並行して進めることが大切です。
利用条件や権限を事前に確認する
Prompt BuilderやSales Emailの利用可否は、契約しているSalesforceのエディションやアドオン、設定、ユーザー権限などによって異なります。
また、Sales Emailプロンプトテンプレートを営業担当者が利用するには、Sales Emailsの有効化や必要な権限の付与も確認する必要があります。実装前に、自社環境で必要な機能が利用できるか、対象ユーザーに適切な権限が設定されているかを確認してください。
契約条件や提供機能は変更される可能性があるため、導入時点のSalesforce公式情報も確認しましょう。
まとめ|Prompt Builderは営業メールを「テンプレート化して再利用する」視点が重要
SalesforceのPrompt Builderでは、Sales Emailプロンプトテンプレートを使い、Salesforceのデータを組み合わせながら営業メールの下書きを生成できます。
活用のポイントは、単にAIへ「メールを書いて」と依頼することではありません。メールの目的やトーン、出力条件を共通ルールとしてテンプレート化し、顧客ごとに変わる情報はSalesforceのレコードから取得することで、再利用できる仕組みにすることが重要です。
まずは利用頻度の高い営業メールから用途を絞ってテンプレートを作成し、プレビューと実際の利用結果を確認しながら改善しましょう。生成結果を人が確認する工程と、参照するCRMデータを整備する運用まで含めて設計することで、Prompt Builderを営業活動の効率化と標準化につなげやすくなります。
シーサイドでは、Salesforceを始めとしたSFA/CRMツールにまつわる課題解決の実績も数多くございます。
お困りやご相談がありましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
