カスタマーサクセスでAIを活用する方法|オンボーディングと利用定着を支援する

カスタマーサクセスでは、契約後の顧客が製品やサービスを使い始め、継続的に価値を得られる状態へ進めることが重要です。しかし、顧客数が増えるほど、一社ごとのオンボーディング進捗や利用状況を人だけで確認し続けることは難しくなります。

そこで活用できるのがAIです。顧客情報や利用データの整理、面談記録の要約、利用状況の分析、フォロー文面の作成などを通じて、担当者の判断や対応を支援できます。

ただし、AIを導入すれば自動的に利用定着が進むわけではありません。どの顧客に、いつ、どのような支援が必要なのかを判断できるよう、データと業務プロセスを組み合わせて活用することが重要です。

本記事では、オンボーディングから利用定着まで、カスタマーサクセスでAIを活用する方法を解説します。

目次

カスタマーサクセスでAIを活用できる業務とは

カスタマーサクセスにおけるAI活用は、問い合わせへの自動回答だけではありません。顧客に関する情報を整理し、状況を把握し、次に取るべき行動を考えるまでの一連の業務で活用できます。

顧客数が多い組織では、AIに情報処理を補助させることで、人が確認すべき顧客や課題を絞り込みやすくなります。

生成AIと分析・予測系の仕組みでは役割が異なる

生成AIは、文章の生成や要約、情報整理、回答案の作成などを得意とします。たとえば、営業から引き継いだ商談情報を要約したり、面談記録から顧客の課題を整理したり、フォローメールの下書きを作ったりする用途が考えられます。

一方、利用データの傾向把握や顧客分類、リスクの推定などは、AIを含む分析・予測機能が関わる領域です。ログイン頻度や機能利用状況などから、利用の停滞を把握する際に役立ちます。

そのため、「生成AIで何を作るか」だけでなく、「どのデータから何を把握し、どの業務につなげるか」まで考える必要があります。

AIは顧客対応そのものより「判断に必要な情報」を整える役割も大きい

カスタマーサクセス担当者には、顧客との関係構築や課題の深掘り、活用方法の提案など、人が担うべき業務があります。AIの価値は、それらをすべて置き換えることではありません。

分散した顧客情報や対応履歴、利用状況を整理すれば、担当者が判断に使える材料を準備できます。情報収集の時間を減らし、顧客との対話や提案に時間を使いやすくすることが目的です。

オンボーディングにAIを活用する方法

オンボーディングは、契約後の顧客が製品やサービスをスムーズに使い始め、必要な初期設定や基本的な活用を進められる状態へ導くための支援です。カスタマーサクセスでは、この初期段階で顧客の目的や進捗を正しく把握する必要があります。

AIを活用すると、顧客情報の整理、進捗確認、案内作成などを支援し、担当者が状況を把握しやすくなります。

顧客情報を整理して必要な支援を把握する

オンボーディングを始める前には、契約目的、利用者、利用予定の機能などを確認します。商談履歴、契約情報、ヒアリング内容、過去の問い合わせなど、確認対象が複数に分かれることもあります。

生成AIでこれらの情報を要約すれば、履歴を一から読み返す負担を軽減できます。導入目的や課題、未確認事項を一定の形式で整理することで、担当者ごとの情報把握のばらつきも抑えやすくなります。

ただし、AIによる要約には誤りや重要情報の取りこぼしが生じる可能性があります。契約条件や顧客との合意事項など重要な情報は、元データと照合できる運用が必要です。

オンボーディングの進捗やつまずきを把握する

オンボーディングでは、初期設定、ユーザー登録、必要機能の設定、操作習得など、顧客が完了すべき項目を明確にして進捗を確認します。

利用データや進捗データを使えば、「一定期間ログインしていない」「必要な設定が未完了」といった状態を把握できます。AIによる分析に加えて、条件判定やスコアリングを組み合わせてフォロー対象を抽出する方法もあります。

重要なのは、AIに「順調かどうか」を曖昧に判断させるのではなく、オンボーディング完了の条件を先に定義することです。何を達成すれば完了なのかが明確であれば、進捗データを判断材料として利用しやすくなります。

顧客ごとの案内やフォローを作成する

顧客によって、導入目的や利用する機能、オンボーディングの進捗は異なります。そのため、すべての顧客に同じ案内を送るだけでは、必要な支援が届かない場合があります。

生成AIを利用すれば、顧客の進捗や課題に応じて、フォローメールや操作案内の下書きを作成できます。FAQやナレッジベースと組み合わせ、顧客の状況に合った情報を提示する方法も考えられます。

一方、契約変更など重要な判断を伴う案内まで無条件に自動送信するのは避けます。定型案内は自動化し、個別性や重要度が高い対応は担当者が確認するなど、役割分担が必要です。

AIで利用状況を把握し、利用定着を支援する

オンボーディングが完了しても、その後も製品やサービスが継続的に利用されるとは限りません。利用定着を支援するには、顧客がどのように利用しているかを継続的に把握し、活用が停滞している場合には早めに対応する必要があります。

AIは、利用データを整理し、変化や傾向を見つける支援に活用できます。オンボーディングで把握した導入目的と、その後の実際の利用状況を結び付けて見ることで、顧客が期待した活用に進めているかを確認しやすくなります。

利用データから顧客の状態を把握する

利用定着は、ログイン回数だけで判断せず、サービスの特性に応じた複数の指標で確認します。たとえば、ログイン頻度、主要機能の利用状況、利用ユーザー数、問い合わせ履歴などです。

こうしたデータをAIや分析機能で整理すると、顧客ごとの利用状況を確認しやすくなります。CRMの顧客属性や契約情報と組み合わせた分析も可能です。

ただし、利用回数が多いことが必ずしも顧客の成功を意味するわけではありません。自社のサービスで顧客が得るべき成果を定義し、その成果につながる利用行動を指標として選ぶことが重要です。

利用が停滞している顧客を見つける

カスタマーサクセスでは、顧客から問い合わせが来てから対応するだけでなく、利用状況の変化から問題の兆候を把握し、先回りして働きかけることも重要です。

たとえば、利用回数が減った、オンボーディング後に主要機能が使われていない、利用者が広がっていない、といった変化は確認対象になります。

AIによる分析や、あらかじめ設定したヘルススコアなどを利用して複数のデータを整理すれば、担当者が優先的に確認すべき顧客を絞り込めます。ただし、「利用が減ったから解約する」とAIだけで断定することは避けるべきです。季節要因や業務変更など別の理由も考えられるため、解約予兆は担当者が状況を確認するための材料として扱います。

顧客の状態に合わせて活用を促進する

停滞している顧客を見つけるだけでは利用定着にはつながりません。把握した状態に応じて、次の行動を促す必要があります。

たとえば、特定機能を利用していない顧客には該当機能のガイドを案内し、設定が途中で止まっている顧客には必要な手順を知らせるなど、顧客の状態に合わせて情報を変えることが考えられます。生成AIは、その際のメールや案内文の作成を補助できます。

利用状況の把握と働きかけをつなげることで、AIをプロアクティブなカスタマーサクセスの支援に活用できます。

AIでカスタマーサクセス担当者の顧客対応を支援する

AIはオンボーディングや利用状況の分析だけでなく、日常的な顧客対応にも活用できます。特に、面談記録や問い合わせ履歴など大量のテキスト情報を扱う業務では、生成AIによる要約や分類が役立ちます。

顧客対応をAIに任せきるのではなく、情報整理と下書きを支援させ、担当者の業務負荷を減らすことが重要です。

面談や問い合わせの情報を整理する

顧客との定例会や問い合わせ対応では、課題、要望、利用上の問題、次回までの対応事項など多くの情報が生まれます。担当者個人のメモだけでは、組織として活用しにくくなります。

生成AIを使って面談記録を要約したり、問い合わせ内容を分類したりすれば、顧客の課題やVoCを整理しやすくなります。また、過去の履歴を短時間で確認できれば、担当者が変わった場合でも顧客の背景を把握しやすくなります。

フォロー内容や顧客向け文章の作成を支援する

面談後のフォローメール、利用促進の案内、FAQへの回答案なども生成AIが支援できる領域です。顧客情報や過去の対応履歴を適切に参照できる環境であれば、一般的な定型文よりも顧客の状況に合わせた下書きを作りやすくなります。

一方で、AIが作成した文章には事実誤認や不適切な表現が含まれる可能性があります。特に契約、料金、障害、クレームなど影響の大きい内容では、人による確認や承認を組み込む必要があります。

カスタマーサクセスにAIを導入するときのポイント

AI活用の成果は、使用するAIツールだけでは決まりません。データ、業務ルール、判断基準が整っていなければ、得た情報を顧客支援につなげにくくなります。

導入前には、「AIで何をしたいか」ではなく、「カスタマーサクセスのどの課題を改善したいか」を明確にすることが重要です。

AIに使わせる顧客データを整理する

オンボーディングや利用定着には、顧客属性、契約情報、利用データ、問い合わせ履歴、進捗情報などが必要です。複数システムに分散していたり、更新されていなかったりすると、分析や生成結果の前提も不安定になります。

CRMなどで必要な情報を関連付け、利用するAIや分析機能から適切に参照できる状態を整えます。個人情報や機密情報を扱う場合は、AIサービスのデータ取り扱い、アクセス権限、保存方針も確認が必要です。

AIに任せる業務と人が判断する業務を分ける

AIは、大量の情報整理、要約、分類、文章の下書きなどを短時間で処理する用途に向いています。一方、顧客の事情を踏まえた重要な判断、関係構築、複雑な課題への対応などは、人が担う必要性が高い領域です。

定型的な情報整理やデータ集計・分類、文章作成の補助にはAIを活用しやすい一方、顧客の事情を踏まえた判断や関係構築、複雑な課題への対応では、人が担う役割も重要です。AIと人の役割を業務単位で決め、必要に応じて人へ切り替えられる仕組みを用意することが重要です。

AI導入そのものではなくカスタマーサクセスのKPIで効果を確認する

AIの利用回数や生成した文章数だけを測っても、カスタマーサクセスの成果は判断できません。AI導入の目的に応じて、オンボーディング完了率、完了までの日数、主要機能の利用率、利用ユーザー数、継続率などを確認します。

たとえばオンボーディングの遅延解消を目的にAIを導入したのであれば、導入前後で完了までの期間や停滞顧客への対応速度がどう変化したかを見る必要があります。利用定着が目的なら、対象となる利用指標が改善したかを追います。

AIを導入すること自体をゴールにせず、カスタマーサクセスのKPIが改善しているかを基準に運用を見直すことで、活用を継続的に改善できます。

まとめ|AIを活用し、必要な顧客に必要な支援を届けられる体制をつくる

カスタマーサクセスにおけるAIの役割は、担当者を単純に置き換えることではありません。オンボーディングでは顧客情報の整理や進捗把握、案内作成を支援し、利用定着では利用状況の分析や停滞している顧客の把握、フォロー内容の検討に活用できます。

顧客数が増えるほど、すべての情報を人だけで確認し続けることは難しくなります。AIに情報整理や分析を補助させることで、担当者は重要な顧客との対話や課題解決に時間を使いやすくなります。

重要なのは、AIによる自動化そのものを目的にしないことです。オンボーディングや利用定着のゴールを明確にし、必要なデータと判断基準を整えたうえで、AIと人の役割を設計します。

必要な顧客に必要なタイミングで適切な支援を届けられる体制をつくることが、カスタマーサクセスにAIを活用する本来の目的です。


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