ヘルプページやFAQを運用していると、「次にどの情報を追加すればよいのか」「既存の記事でユーザーの疑問に十分答えられているのか」が分かりにくくなります。記事数が増えるほど、担当者の感覚だけで改善対象を決めることも難しくなります。
そこで活用できるのがAIです。
サイト内検索のログや問い合わせ履歴をAIで整理すれば、ユーザーがどのような質問をしているのか、どのテーマで困っているのかを把握しやすくなります。さらに、整理した質問と既存のヘルプ記事を照合することで、回答が不足しているテーマや、記事はあるものの見つけにくい情報も洗い出せます。
本記事では、ヘルプページ改善にAIを使う際に集めたいデータ、検索されている質問の整理方法、不足コンテンツの見つけ方、改善の優先順位を決める考え方まで解説します。
AIを使うとヘルプページ改善の何が変わるのか
ヘルプページ改善にAIを使う目的は、FAQやヘルプ記事を自動生成することだけではありません。
特に活用しやすいのは、大量の検索ログや問い合わせ履歴を整理し、改善すべきテーマを見つける作業です。
ヘルプページは記事数だけでは改善できない
ヘルプページでは、記事を増やせばユーザーが自己解決しやすくなるとは限りません。ユーザーが知りたい内容と記事のテーマが合っていなければ、必要な情報にたどり着けないためです。
また、運営側が想定する質問と、実際にユーザーが入力する検索ワードには違いが生まれます。たとえば運営側が「アカウント情報の変更」という記事名を付けていても、ユーザーは「メールアドレスを変えたい」「登録情報を修正したい」と検索するかもしれません。
そのため、ヘルプページを改善するには、運営側が追加したい情報だけではなく、ユーザーが実際に検索・問い合わせしている内容を確認する必要があります。
AIは大量の質問を整理する作業に向いている
検索ログや問い合わせ履歴が大量に蓄積すると、人がすべてを読んで分類するには大きな工数がかかります。AIを使えば、意味の近い質問をまとめたり、質問ごとのテーマや目的を整理したりする作業を効率化できます。
たとえば、「請求書を再発行したい」「請求書をもう一度ダウンロードしたい」といった表現の違う質問を、請求書の再発行という共通テーマに整理できます。
ただし、件数の正確な集計までAIだけに任せる必要はありません。検索回数や問い合わせ件数はアクセス解析ツールや表計算ソフトで集計し、AIは質問の意味を分類・要約する用途に使うなど、役割を分ける方が管理しやすくなります。
AIで分析する前に集めたい3つのデータ
AIによる分析を始める前に、ユーザーの行動や質問を表すデータを集めます。既存のヘルプ記事だけをAIに読み込ませても、「現在のヘルプページに何が書かれているか」は分かりますが、「ユーザーが何を探しているか」は分かりません。検索ログや問い合わせ履歴と組み合わせて分析することが重要です。
具体的に集めたいデータの種類は次の通りです。
サイト内検索の検索ログ
まず確認したいのが、ヘルプページ内のサイト内検索です。検索語句を取得できる環境であれば、ユーザーが実際に入力した言葉から、どのような疑問を持っているかを把握する材料を得られます。
確認したいのは検索クエリだけではありません。利用しているヘルプセンターやアクセス解析の仕組みで取得できる場合は、検索回数、検索結果の有無、検索後のクリック状況なども確認します。
検索回数が多ければ、そのテーマへの需要が大きい可能性があります。一方、検索結果が表示されているのに記事がクリックされていない場合は、記事が存在しないのではなく、タイトルや検索結果に表示される情報が検索意図と合っていない可能性があります。
問い合わせ履歴やチャットログ
サイト内検索だけでは、ユーザーの疑問をすべて把握できません。検索せずに問い合わせフォームやメール、チャットを利用するユーザーもいるためです。
問い合わせ履歴を分析すると、「ヘルプページには記事があるのに同じ質問が繰り返されている」「特定の機能について似た質問が多い」といった傾向を探せます。
分析用のデータを作る際は、1件の検索や問い合わせを1行に整理し、質問内容、発生日、問い合わせ経路など必要な項目だけを残しておくと、AIによる分類や後工程での集計がしやすくなります。
既存のヘルプ記事・FAQ
3つ目は、現在公開しているヘルプ記事やFAQです。記事タイトル、質問文、回答内容、カテゴリなどを整理し、検索ログや問い合わせ履歴から抽出した質問と照合できるようにします。
記事の有無だけではなく、ユーザーが求めている内容に回答できているかまで確認します。同じテーマの記事が存在していても、回答範囲が狭ければ改善対象になります。
検索されている質問をAIで整理する方法
データを集めたら、次にAIを使って質問を整理します。検索ワードや問い合わせ内容は、表現がばらばらなままでは件数や傾向を把握しにくいため、意味の近い質問をまとめ、ユーザーが何を解決したいのかを整理しましょう。
具体的な整理の手順は次の通りです。
表現が違う質問を同じテーマにまとめる
最初に行いたいのが、類似質問のグルーピングです。
たとえば、「パスワードを忘れた」「パスワードを再設定したい」は近いテーマですが、「ログインできない」にはパスワード以外の原因も含まれます。AIには、単語が一致しているかだけではなく、質問の意味を踏まえて分類させます。
一方で、意味が近そうに見える質問を一つにまとめすぎると、必要な回答の違いを見落とします。AIに分類させた後は、同じ回答で解決できる質問なのかを担当者が確認します。
質問ごとに検索意図を整理する
同じ機能についての質問でも、ユーザーが知りたいことは異なります。
たとえば「アカウント」というテーマでも、操作方法を知りたい人、エラーを解決したい人、仕様を確認したい人では必要な回答が違います。
そこでAIを使い、「操作方法」「トラブル解決」「仕様確認」「料金・契約」のように質問の目的を整理します。
単語だけで分類せず、ユーザーが何を解決したいのかまで整理することで、必要なコンテンツを考えやすくなります。
発生頻度の高い質問を抽出する
類似質問をまとめたら、テーマごとの検索回数や問い合わせ件数を確認します。ここではAIに件数を推測させるのではなく、元データにある件数や集計結果と、AIが分類したテーマを組み合わせて確認します。
「テーマ名」「代表的な質問」「検索回数」「問い合わせ件数」「主な検索意図」のような形式にまとめると、どのテーマに需要が集中しているのかを比較しやすくなります。
AIで不足しているヘルプコンテンツを見つける方法
ユーザーの質問を整理したら、既存のヘルプ記事と照合します。
ここでいう不足コンテンツは、単に「記事が存在しないテーマ」だけではありません。記事があっても十分に回答できていない、ユーザーが見つけられないといった問題も含めて確認します。
ここでは、不足コンテンツの見つけ方と不足コンテンツに対しての対応について整理します。
質問に対応する記事の存在を確認する
最も分かりやすいコンテンツギャップは、検索や問い合わせが発生しているのに、対応するヘルプ記事が存在しない状態です。
AIには、整理した質問一覧と既存記事のタイトルや内容を比較させ、回答候補となる記事が見つからないテーマを抽出させます。
ただし、AIが「記事なし」と分類しても、表現が異なる既存記事を見落としている可能性があります。新規記事を作成する前に、担当者が既存コンテンツを確認します。
記事はあるが回答内容が不足しているかを調べる
既存記事があっても、ユーザーの疑問をすべて解決できるとは限りません。
たとえば操作手順は説明していても、操作できない場合の対処方法がない、対象となるプランや権限の説明がないなど、回答の一部が不足していることがあります。
この場合は新しい記事を増やすのではなく、既存記事への加筆が適しています。
AIで質問と記事内容を比較し、質問のどの部分に回答できていないかを整理すると、加筆すべき情報を特定しやすくなります。
記事はあるがユーザーが見つけにくいケースを確認する
検索されているテーマに対応する記事が存在していても、その記事が見つけにくければ改善が必要です。
ユーザーが使う検索ワードと記事タイトルの言葉が大きく異なっていたり、関連するページからの内部リンクがなかったりすると、必要な情報まで到達できないことがあります。
この場合、改善策は新規記事の作成ではありません。タイトルや見出しの見直し、ユーザーが使う表現の追加、関連記事への内部リンク設置などを検討します。
重複や矛盾している記事も確認する
記事を長期間追加しているヘルプページでは、似た内容の記事が複数作成されることがあります。また、仕様変更後も古い説明が残っていると、ページによって回答が異なる状態になる可能性があります。
AIを使って既存記事同士の内容を比較すれば、類似した内容の記事や説明が一致していない箇所を探す補助にもなります。
不足コンテンツの追加だけでなく、重複記事の統合や古い情報の更新まで改善対象に含めます。
見つかった改善候補に優先順位を付ける
AIで質問や不足コンテンツを整理すると、改善候補が多数出ることがあります。すべてを同時に修正するのではなく、ユーザーへの影響が大きいテーマから対応するのがおすすめです。
ここでは、改善候補の優先順位の付け方について整理します。
検索回数や問い合わせ件数を見る
まず確認したいのが発生頻度です。検索回数や問い合わせ件数が多いテーマは、それだけ多くのユーザーが情報を必要としている可能性があります。
ただし、件数だけで優先順位を決めると、重要な問題を見落とすことがあります。発生頻度が低くても、契約、料金、アカウント利用など、解決できない場合の影響が大きい質問もあるためです。
解決できていない可能性を確認する
次に、「ユーザーがその質問を解決できているか」を確認します。
取得できるデータは利用環境によって異なりますが、検索結果が0件だった検索、検索後に記事がクリックされていないケース、検索後に問い合わせが発生しているケースなどは、改善候補を考える材料になります。
検索・問い合わせの発生頻度と、解決できていない可能性の両方を見ることで、「多くのユーザーが困っているのに、十分な回答を届けられていないテーマ」を優先しやすくなります。
新規作成・更新・導線改善を使い分ける
改善対象が決まったら、問題に応じて施策を分けます。
記事がなければ新規作成、回答が不足していれば既存記事への追記、見つけにくければタイトルや内部リンクの改善、内容が重複していれば記事の統合を検討します。
AI分析の目的は、不足記事を大量に作ることではありません。ユーザーが答えにたどり着けない原因を整理し、それぞれに合った改善方法を選ぶことです。
ヘルプページ改善でAIを使うときの注意点
AIは大量の検索ログや問い合わせ内容を整理する作業を効率化できますが、出力結果をそのまま採用するのは適切ではありません。入力するデータとAIによる分析結果の両方を確認しながら利用する必要があります。
最後に、AIを使用して改善を見つける上での注意点についても押さえておきましょう。
問い合わせデータの取り扱いに注意する
問い合わせ履歴には、氏名やメールアドレス、顧客固有の契約情報などが含まれる場合があります。
AIにどこまでの情報を入力できるかは、利用するサービスの契約内容、データの取り扱い、社内のセキュリティルールなどによって異なります。問い合わせデータを分析する前に、自社の利用環境で入力可能な情報の範囲を確認します。
必要に応じて、分析に不要な個人情報を除外したり、質問部分だけを取り出したりする方法も検討します。
AIによる分類や不足判定を人が確認する
AIは、意味の近い質問を誤って一つのテーマにまとめたり、既存記事があるのに「コンテンツが不足している」と分類したりする可能性があります。
また、検索回数が多いという事実だけでは、その質問が実際に解決できたかまでは分かりません。
そのため、AIによる分析は改善候補を絞り込むために使い、記事の新規作成や統合、削除といった最終判断は担当者が行います。AIは分類や比較、人は業務上の正しさや公開可否を確認するというように、役割を分けることが重要です。
まとめ|AIを使ってヘルプページを継続的に改善する
ヘルプページの改善は、一度不足コンテンツを追加すれば完了するものではありません。サービスの機能追加や料金変更、ユーザー層の変化によって、新しい検索や問い合わせが発生します。
そのため、検索ログや問い合わせ履歴を定期的に確認し、AIで類似質問を整理しながら、既存コンテンツとのギャップを継続的に確認することが重要です。
検索される質問を起点にすれば、担当者の感覚だけに頼らず、ユーザーが実際に必要としている情報から改善対象を考えられます。AIは、そのために大量のデータを整理し、既存コンテンツと比較する作業を効率化する手段です。
「どの記事を増やすか」だけではなく、「どの記事を更新するか」「どの情報を見つけやすくするか」まで含めて改善を繰り返すことで、ユーザーが必要な情報にたどり着きやすいヘルプページを目指すことができるでしょう。
シーサイドでは、各種AIツールの導入や活用に関するご相談も受け付けております。
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