デジタルマーケティングの世界は常に進化し、その複雑さは増すばかりです。
「集客はうまくいっているが、売上につながらない」「リピーターがなかなか増えない」といった課題を抱えているマーケティング担当者は少なくありません。
そうした状況でビジネスを成功に導く羅針盤となるのが、RACEモデルです。
RACEモデルは、複雑なデジタルマーケティングのプロセスを「Reach(リーチ)」「Act(行動)」「Convert(コンバージョン)」「Engage(エンゲージ)」という4つのフェーズに分解し、それぞれの目標と施策を明確にするためのフレームワークです。
本記事では、RACEモデルの基本概念から、各フェーズで具体的に何をすべきか、そしてどのように活用すればビジネスの成長に繋がるのかを、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。
はじめに なぜ今、RACEモデルが重要なのか
かつては「認知→興味→購買」といったシンプルなマーケティングファネルで顧客の行動を捉えるのが主流でした。
しかし、スマートフォンの普及や多様なメディアの登場により、顧客の購買プロセスはより複雑になっています。
単に広告で集客するだけでは成果が出にくく、顧客がサービスと出会ってから、実際に購入し、その後の関係性を維持するまでの一連の体験全体を設計することが不可欠です。
RACEモデルは、この複雑化したカスタマージャーニー全体をカバーするために考案されました。
特に、デジタルマーケティングに特化しており、ウェブサイトやSNS、広告といった多様なチャネルを統合的に管理・評価できる点が大きな強みです。
顧客を一方的な流れで捉えるのではなく、「Engage(エンゲージ)」という顧客との関係性を継続するフェーズを設けることで、顧客生涯価値(LTV)の最大化を目指します。
これが、多くの企業がRACEモデルに注目する理由です。
RACEモデルの基本概念 4つのフェーズの全体像
RACEモデルは、デジタルマーケティングコンサルティング会社であるSmart Insightsによって提唱されました。
考案者であるダニエル・ローソン氏は、デジタルマーケティングにおける顧客の行動をより実践的に、そして網羅的に捉えるためにこのフレームワークを開発しました。
RACEという言葉は、以下の4つのフェーズの頭文字から構成されています。
- Reach:認知を広げ、潜在顧客にリーチする
- Act:ウェブサイトやSNSで興味を引きつけ、行動を促す
- Convert:購入や申込みといったコンバージョンに結びつける
- Engage:既存顧客との関係性を深め、ファン化・優良顧客化する
この4つのフェーズは、直線的な流れではなく、循環するサイクルとして捉えることが重要です。
Engageフェーズで良好な関係性を築いた顧客は、再びReachフェーズでの拡散に貢献したり、新たな顧客獲得のきっかけになったりします。
RACEモデルは一度きりの売上で終わらない、持続的な成長を可能にするデジタルマーケティング戦略の基盤となります。
フェーズ1:Reach(リーチ)
このフェーズでの目的
Reachフェーズの目的は、自社の製品やサービスを知らない潜在顧客に、幅広く情報を届けることです。
この段階では、まだ購買意欲が低い見込み客に対して、まずはブランドの存在や提供する価値を認識してもらうことに重点を置きます。
具体的な施策
- SEO対策とコンテンツマーケティング
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- 潜在顧客が抱える課題を解決するようなブログ記事、ホワイトペーパー、動画などのコンテンツを作成します。
- 検索エンジンで上位表示されるようにSEO対策を行うことで、見込み客の自然流入を増やします。
- 広告施策
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- GoogleやYahoo!のリスティング広告、FacebookやInstagramのSNS広告などを活用し、ターゲット層に効率的にリーチします。
- 特定のキーワードやデモグラフィック情報に基づいて広告を配信することで、関心度の高いユーザーにアプローチできます。
- SNS運用とインフルエンサーマーケティング
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- SNSアカウントを運用し、定期的に情報を発信することで、フォロワーとの接点を作り、ブランドの認知を広げます。
- ターゲット層に影響力を持つインフルエンサーに自社製品を紹介してもらうことで、信頼性を伴ったリーチが期待できます。
測定すべきKPI
Reachフェーズで重視すべきは、どれだけ多くの人に情報を届けられたかです。
以下のKPIを追跡することで、施策の効果を可視化できます。
- ウェブサイトのトラフィック数
- 広告のインプレッション数(表示回数)
- リーチ数(広告を見たユニークユーザー数)
- SNSのフォロワー数
これらの指標を分析することで、どのチャネルが最も効果的に認知を広げているかを判断し、予算配分や施策の改善に活かします。
フェーズ2:Act(行動)
このフェーズでの目的
Actフェーズは、ReachフェーズでウェブサイトやSNSに訪れたユーザーに、さらに興味を持ってもらい、具体的な行動を促す段階です。
単にサイトを閲覧するだけでなく、ブログ記事を読んだり、動画を視聴したり、資料をダウンロードしたりといった、マイクロコンバージョンと呼ばれる行動を促すことが重要です。
具体的な施策
- ウェブサイトの最適化
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- ユーザーがサイト内で迷わないように、分かりやすいナビゲーションやサイト構造を設計します。
- UX(ユーザー体験)やUI(ユーザーインターフェース)を改善し、快適な閲覧環境を提供します。
- フォーム最適化(EFO)を行い、問い合わせや資料請求のハードルを下げます。
- 魅力的なランディングページ(LP)の作成
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- 広告から流入したユーザーが、求めている情報にすぐたどり着けるように、特定の商品やサービスに特化したランディングページを作成します。
- LPでは、ユーザーのベネフィットを明確に伝え、次の行動へと繋がるCTA(コールトゥアクション)を効果的に配置します。
- 有益な情報の提供
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- ウェブサイト上で、ユーザーの課題解決に役立つブログ記事やウェビナー、ホワイトペーパーなどを提供します。
これにより、見込み客は自社に信頼感を抱き、次のフェーズへと進みやすくなります。
- ウェブサイト上で、ユーザーの課題解決に役立つブログ記事やウェビナー、ホワイトペーパーなどを提供します。
測定すべきKPI
Actフェーズでは、ユーザーのエンゲージメント度合いを測る指標が重要になります。
次のようなデータをウェブサイトアナリティクスツール(Google Analyticsなど)で分析することで、ユーザーがどこでつまずいているか、どのコンテンツに関心を持っているかを把握し、サイト全体の改善に繋がります。
- セッション数(サイト訪問回数)
- 直帰率(1ページだけ見て離脱した割合)
- 平均滞在時間
- ページビュー数
- クリック率(CTR)(CTAのクリック率など)
フェーズ3:Convert(コンバージョン)
このフェーズでの目的
Convertフェーズは、見込み客を実際の顧客へと変える、最終的な成果に結びつく最も重要なステップです。
この段階では、購買や申込み、問い合わせといった、ビジネスの成長に直結するコンバージョンを最大化することを目指します。
具体的な施策
- CTAの最適化
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- 「今すぐ購入」「無料体験を始める」など、ユーザーが取るべき行動を明確に促すCTAを、適切な場所に配置します。
- ボタンの色や文言、配置場所をABテストで検証し、最も効果的なパターンを見つけ出します。
- メールマーケティングとパーソナライズ
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- 見込み客リストに対して、購買意欲を高めるためのメールを送信します。
- ユーザーの閲覧履歴や行動に基づいて、パーソナライズされた情報を届けることで、コンバージョンに繋がりやすくなります。
- 購入プロセスの簡素化
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- ECサイトであれば、決済プロセスの手順を減らし、入力フォームを分かりやすくすることで、途中の離脱を防ぎます。
- 購入までのステップが多すぎないか、ユーザーにとってストレスになっていないか、常にチェックすることが大切です。
測定すべきKPI
Convertフェーズで追うべきは、直接的なビジネス成果です。
次の指標を定期的に確認し、どの施策が最も効果的にコンバージョンに貢献しているかを分析することで、マーケティング予算の最適な配分を決定できます。
- コンバージョン数
- コンバージョン率
- 顧客獲得単価(CPA)
- 売上高
フェーズ4:Engage(エンゲージ)
このフェーズでの目的
多くのマーケティング戦略は、Convertフェーズで終わりがちです。
しかし、RACEモデルの最大の強みは、このEngageフェーズにあります。
一度獲得した顧客との関係性を継続的に深め、リピーターやロイヤル顧客へと育成することで、安定的な収益基盤とブランドの持続的な成長を実現します。
具体的な施策
- CRMとMAの活用
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- CRM(顧客関係管理)ツールを用いて、顧客の購買履歴や問い合わせ履歴を一元管理します。これにより、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションが可能になります。
- MA(マーケティングオートメーション)ツールを使えば、顧客の行動に基づいて自動でメールを送信するなど、効率的な顧客育成が実現します。
- 定期的なコミュニケーション
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- 購入後のサンキューメール、新商品の案内、お役立ち情報のメールマガジンなど、定期的に顧客と接点を持つことで、ブランドを忘れられるのを防ぎます。
- SNSやウェブサイトを通じて、顧客のレビューやフィードバックを募り、サービス改善に活かすことも重要です。
- コミュニティ運営とカスタマーサポート
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- 顧客同士が交流できるオンラインコミュニティを運営したり、質の高いカスタマーサポートを提供したりすることで、顧客満足度を高めます。
測定すべきKPI
Engageフェーズでは、顧客との関係性の深さを測る指標が重要です。
- リピート率
- 顧客満足度
- 解約率
- 顧客生涯価値(LTV)
- NPS(ネットプロモータースコア)
これらの指標を向上させることで、新規顧客獲得にかかるコストを抑えつつ、安定した収益を確保できます。
RACEモデルの活用方法と他モデルとの比較
RACEモデルの強み デジタル環境に特化した包括性
RACEモデルの最大の強みは、顧客がブランドと出会ってからファンになるまでの全プロセスを、デジタルマーケティングの観点から包括的に捉えている点にあります。
それぞれのフェーズが明確に定義されているため、戦略を立てやすく、どこに課題があるのかを特定しやすいのが特徴です。
また、カスタマージャーニーマップを作成する際のフレームワークとしても非常に有効です。
他のフレームワークとの違い
AIDMAモデル
1920年代に提唱された古典的なモデルで、「Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)」の流れを指します。
一方通行のファネル構造であり、主に広告を中心としたマスメディアの時代に効果的でした。
RACEモデルは、この「Action」以降の顧客との関係性を重視している点が異なります。


AARRRモデル
スタートアップ企業でよく用いられる「Acquisition(獲得)→Activation(活性化)→Retention(継続)→Referral(紹介)→Revenue(収益)」のモデルです。
サービス利用開始後の「Retention」と「Referral」を重視する点でRACEモデルの「Engage」と似ていますが、AARRRは特にユーザーの成長(グロースハック)に特化したモデルと言えます。
RACEモデルはより広範なデジタルマーケティング戦略全体をカバーします。
まとめ RACEモデルで継続的な成長を実現する
いかがでしたか?
Raceモデルの基本概念から、4つのフェーズの詳細、他のフレームワークとの違いについて解説いたしました。
RACEモデルは、デジタルマーケティングにおける羅針盤です。
Reach(リーチ)で広く認知を広げ、Act(行動)で興味を引きつけ、Convert(コンバージョン)で成果に結びつけ、そしてEngage(エンゲージ)で顧客との関係を深めるという一連の循環を回し続けることで、ビジネスの持続的な成長を実現を目指します。
重要なのは、各フェーズで適切な施策を実行し、それぞれのKPIを正確に測定することです。
どこにボトルネックがあるのか、どの施策が効果的だったのかを常に分析し、改善を繰り返すことで、より効率的で効果的なマーケティング戦略を構築できるでしょう。
ぜひ今日からRACEモデルをデジタルマーケティング戦略に取り入れ、ビジネスの可能性を最大限に引き出してみてください。
シーサイドでは、デジタルマーケティングやDXにまつわる課題解決の実績も数多くございます。
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