HubSpotのData Agentとは?CRMデータから顧客理解を深める使い方

HubSpotに蓄積した顧客情報を、営業やマーケティングに生かせていないことがあります。企業の基本情報は整理されていても、顧客が話した課題や検討条件がメモや通話記録に分散していれば、必要な情報の確認に時間がかかります。

こうした情報の整理を支援するのが、HubSpotのData Agent(データエージェント)です。CRMに登録された情報や指定したデータソースをAIで調査し、必要な情報を抽出できます。

本記事では、Data Agentの主な機能と使い方、営業・マーケティングでの活用方法、運用上の注意点まで解説します。

目次

HubSpotのData Agentとは

Data Agentを活用するには、従来のCRM管理と何が異なるのかを理解しておくことが重要です。

まずは、機能の位置付けと、支援できる業務を確認します。

Data Agentの概要と役割

Data Agentは、HubSpotのAI機能群「Breeze」に関連するデータ活用機能です。CRMレコードや指定したデータソースを調査し、質問への回答生成、情報の抽出・要約、プロパティーへの値の入力などを支援します。記録を読み解く作業の一部を効率化できる点が特徴です。

HubSpotには、コンタクト、会社、取引、チケットなどのレコードがあり、顧客との接点に関する情報が蓄積されます。Data Agentは、こうしたCRMデータに加えて、機能と設定に応じて企業ウェブサイトや通話の文字起こしなども参照できます。
ただし、すべてのデータに自動でアクセスするわけではありません。利用できる情報はデータソースの指定や権限、AI設定によって異なります。

従来のCRMデータ管理との違い

従来のCRMでは、企業名、業種、商談フェーズなどを決められたプロパティーに登録し、検索や絞り込みに活用する方法が中心です。
一方、顧客が会話で述べた懸念点や検討の背景は文章として残るため、同じ観点で比較するには担当者が個別に読み直す必要があります。

Data Agentでは「通話記録に明示された課題を整理する」「企業の事業内容を調べる」といった問いに沿って情報を抽出できます。
ただし、こうした文章の中に埋もれた情報を確認しやすくする一方で、AIが生成した回答は元データの代わりにはなりません。
事実を記録する通常のプロパティーと併用し、必要に応じて根拠となる情報を確認できる運用が重要です。

Data Agentの主な3つの機能

Data Agentの主要機能は、スマートプロパティー、スマートアクション、スマート列の3つです。
いずれもAIによる情報処理を利用しますが、結果をレコードに保存するのか、業務処理に組み込むのか、データセットで比較するのかという違いがあります。

機能1|スマートプロパティーで顧客情報を抽出・補完する

スマートプロパティーは、AIが調査した回答をCRMレコードのプロパティーに入力する機能です。通常のプロパティーでは担当者が値を登録しますが、スマートプロパティーでは「何を知りたいか」をプロンプトに記述し、情報源を指定して値を生成します。

参照元として設定できるのは、プロパティーデータ、会社のウェブサイト、ウェブリサーチ、通話の文字起こしなどです。企業の特徴や、顧客が明示した検討条件を一定の形式で整理すれば、複数のレコードを確認する際の手掛かりになります。
なお、スマートプロパティーは標準のコンタクト・会社情報のエンリッチメントとは異なる機能です。

適切な回答を得るには、対象とする情報や抽出条件を明確にする必要があります。必要な記録が存在しない場合、値が生成されるとは限りません。項目が常に最新の状態に保たれるわけではないため、いつ値を入力・再生成するかも決めておくことが大切です。

機能2|スマートアクションで情報処理をワークフローに組み込む

スマートアクションは、Data Agentによる調査や要約などをHubSpotのワークフロー内で実行する機能です。対象レコードが条件を満たしたときに処理を行い、出力を後続のレコード更新や条件分岐に利用できます。スマートプロパティーにAIの結果を入力するアクションも用意されています。

ただし、利用するデータの範囲はアクションによって異なります。特に「データエージェント:カスタムプロンプト」では、プロンプトに追加していないプロパティーや活動履歴を自動的には参照しません。必要な項目や関連情報を指定したうえで、結果の保存先と利用方法を設計する必要があります。誤った分類によって後続処理が動くことを避けるため、重要な判断は担当者が確認できる仕組みを残しましょう。

機能3|スマート列でデータの分析・整理に役立てる

スマート列は、Data Studio(データポータル)のデータセットにAIが生成した情報を列として追加する機能です。プロパティーとして個別レコードに値を持たせるスマートプロパティーとは異なり、データセット上で複数の対象を共通の観点から調査・比較するときに適しています。

データセットに追加した列では、調査内容と参照元を設定し、AIが生成した結果を確認できます。ただし、通常のCRM一覧画面に表示列を追加する操作とは別のものです。Data Studioは公式ドキュメントでData Hub Professional/Enterprise向けのベータ機能として案内されているため、スマート列を使う場合は契約と利用状況の確認が必要です。

Data Agentの基本的な使い方

初めて利用するときは、整理したい情報を一つ選び、利用条件の確認から設定、テストまで順に進めましょう。

基本的な使い方は次の通りです。

利用条件とAI機能の設定を確認する

公式案内では、Data AgentはMarketing Hub、Sales Hub、Service Hub、Data Hub、Content HubのStarter以上、Smart CRMとRevenue HubのProfessional以上などで利用できます。ただし、機能によって条件は異なり、ワークフローのAIアクションには対応製品のProfessional/Enterpriseが必要です。スマート列を利用するData StudioもData Hub Professional/Enterprise向けに案内されています。

管理者はAI設定で生成AI機能へのアクセスとCRMデータの利用を有効にします。通話の文字起こしやファイルを参照する場合は、顧客との会話データやファイルデータの設定も関係します。ユーザー設定の「データエージェントのアクセス」も有効にします。スマートプロパティーの作成にはプロパティー設定の編集権限など、ワークフローの作成にはその操作権限が必要です。

分析したい情報とデータソースを指定する

スマートプロパティーを作成する場合は、HubSpotの[その他]から[データ管理]>[データエージェント]へ進みます。[その他]がなければ[データ管理]から直接開きます。対象オブジェクト、プロパティー名、フィールドタイプを選び、プロンプトとデータソースを設定します。

プロンプトは「顧客を分析する」と広く指定するよりも、「通話の文字起こしから、顧客が明示した懸念点だけを整理する」のように目的と条件を明確にすると、出力を評価しやすくなります。根拠がなければ不明とする条件や回答形式も指定すれば、推測による誤りを抑えられます。

生成結果をプレビューして確認する

設定後は、少数のレコードで出力を確認します。作成画面のプレビューに加え、Data AgentのPlaygroundを使えば、実際のCRMレコードを対象にしたテストができます。Playgroundの結果は一時的で、CRMデータは更新されず、HubSpotクレジットも消費されません。通常の実行とは区別しましょう。

出力を確認するときは、元の記録と一致しているか、重要な条件が省略されていないか、不明な情報を断定していないかを見ます。期待した回答にならなければ、プロンプトや情報源を調整して再度検証します。確認後に処理対象を増やすことで、誤情報の拡散を抑えられます。

Data AgentでCRMデータから顧客理解を深める方法

顧客理解を深めるうえで重要なのは、AIによる要約そのものではなく、整理された情報を業務上の判断に使うことです。確認できた事実と、まだ分かっていないことを区別しながら、営業準備やマーケティング施策につなげます。

顧客情報や過去のやり取りから課題を整理する

顧客の課題は、業種や企業規模だけで判断できません。通話では現状の不満や導入条件、社内の検討状況などが話される場合がありますが、記録が長文のままでは担当者によって注目する箇所が異なり、情報共有にも手間がかかります。

Data Agentで利用可能な通話の文字起こしを参照し、顧客が明示した課題や条件を整理すれば、確認すべき論点を把握しやすくなります。ただし、発言の背景をAIが正しく理解したとは限りません。要約に含まれる内容を確認し、事実として扱う箇所は元の記録に戻って確かめることが必要です。特に、顧客の推測上の意向と実際の発言を混同しないことが重要になります。

顧客ごとの状況を把握して営業準備に役立てる

商談準備では、相手企業の事業内容だけでなく、過去にどのような説明や質問が交わされたのかを把握する必要があります。スマートプロパティーで関心事項や検討条件を整理しておけば、担当者は情報を確認する起点を持ち、次の商談で確認する事項を検討しやすくなります。

ここで役立つのは、情報を要約することだけではありません。予算、導入時期、意思決定の流れなどがCRMに記録されていなければ、未確認事項として整理することで、ヒアリングすべき内容を明確にできます。AIに推測させた内容を確定情報として登録するのではなく、記録で確認できる事項と担当者が追加確認する事項を分けて扱いましょう。

顧客情報を営業・マーケティング活動の判断材料にする

顧客情報を共通の観点で整理すれば、営業担当者間で認識をそろえ、対応の優先順位を検討する材料になります。文章で残されていた関心領域や課題を一定の形式で確認できるようにすれば、担当変更時にも重要な情報を引き継ぎやすくなります。ただし、AIの出力だけを根拠に案件の重要度を決めるのは適切ではありません。

マーケティングでは、整理された関心事項を顧客セグメントやナーチャリング施策の検討に利用することが考えられます。その際は、メールへの反応やウェブ上の行動、営業担当者が把握した状況など、ほかの情報も合わせて確認する必要があります。Data Agentを顧客の購買意欲を自動的に確定する機能として扱うのではなく、意思決定に必要な情報を整理する手段として位置付けることが重要です。

Data Agentを活用する際の注意点

Data Agentを継続的に利用するには、回答の精度だけでなく、処理にかかる費用や扱う情報の範囲にも目を向ける必要があります。
運用開始前に確認方法と管理の責任を決めておくことで、実務への組み込みを進めやすくなります。

AIが生成した情報の正確性を確認する

Data Agentの回答は、参照するデータの内容とプロンプトの条件に左右されます。元のレコードが古かったり、通話記録に重要な発言が残っていなかったりすれば、要約も不完全になる可能性があります。また、長い文章を短くまとめる過程で条件や留保が抜けることも考えられます。

営業方針や顧客への案内に関わる内容は、必要に応じて原文や登録情報と照合してください。回答が得られない場合の扱いを決め、誰がどの段階で確認するかを明確にすることも大切です。AIによる要約を事実の記録と混同しない運用が、情報への信頼を支えます。

HubSpotクレジットやデータの取り扱いに注意する

Data Agentの通常の処理にはHubSpotクレジットが必要です。スマートプロパティーでは、処理を実行して値が入力されなかった場合もクレジットが消費されます。対象レコード数や実行頻度によって消費量が変わるため、少数の対象で必要性を確認してから適用範囲を広げましょう。

HubSpotはAIのプロンプトなどに機密情報を入力しないよう注意を促しています。CRMには個人情報や取引上の情報が含まれるため、AI設定、アクセス権限、社内の情報管理方針を確認し、利用するデータの範囲を明確にする必要があります。費用と情報管理の両面から定期的に運用を見直すことが重要です。

まとめ|Data Agentを顧客理解とCRMデータ活用に役立てよう

HubSpotのData Agentは、スマートプロパティーによる情報の抽出・補完、スマートアクションによる業務処理への組み込み、スマート列によるデータ分析を支援します。CRMに蓄積された情報を共通の観点で整理することで、顧客課題の把握や営業準備、マーケティング施策の検討に活用できます。

重要なのは、AIの回答を結論として扱わず、元情報の確認と人による判断につなげることです。まずは目的を一つ定め、データソースと運用条件を確認したうえで、日常業務で使える形に整えていきましょう。


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