契約更新の時期が近づくたびに、対象となる契約を探し、過去のやり取りを読み返して、顧客ごとに案内メールを作成する―こうした作業は営業やカスタマーサクセスの負担になりがちです。情報の保管場所が分かれていると、対象の把握に手間がかかり、連絡漏れにもつながります。
こうした課題を改善するには、まず期限と対応状況を管理できる状態を整え、そのうえでAIを情報の整理や案内文の作成に活用することが重要です。
本記事では、契約更新フォローの業務を一連の流れとして捉え、更新対象の確認から顧客への案内までを効率化する進め方を解説します。
契約更新フォローでAIを活用できる業務とは
契約更新フォローには、契約期限の確認だけでなく、更新条件の把握、顧客との調整、連絡履歴の管理など、性質の異なる作業が含まれます。
AIを導入する際は、業務が滞りやすい箇所を把握し、AIに任せる作業と既存システムで処理する作業を分けて考えます。
契約情報の確認や顧客への連絡に時間がかかる理由
契約書はファイルサーバー、顧客情報はCRM、更新に関する相談履歴はメールといったように、情報が複数の場所に保存されている場合、担当者はそれぞれを行き来して状況を確認する必要があります。複数の契約がある顧客では、満了日や更新条件も個別に確かめる必要があり、作業はいっそう複雑になります。
案内文の作成も負担になる工程です。前回の文面を流用するだけでは、現在の契約条件や顧客との合意状況に合わない可能性があるため、過去のやり取りを読み返す必要があります。確認が重なるほど、提案や条件調整に使える時間が減ります。
AIに任せる業務と自動化で対応する業務の違い
AIが必要な処理と、決められたルールで行える処理は異なります。例えば、契約満了日がデータとして登録されていれば、一定期間内に満了する契約の抽出はExcelのフィルターやCRMの検索機能で対応できます。期限前の担当者への通知も、対応するワークフロー機能があれば自動化できます。
一方、契約書から確認すべき条項を整理したり、長い対応履歴を要約したり、顧客の状況に合わせたメールの下書きを作ったりする作業には、生成AIの活用余地があります。ただし、AIの出力は正確性が保証されるものではありません。確定した条件に基づく処理は既存システムに任せ、文章の整理や作成をAIで支援し、契約上の判断は担当者が行うという役割分担が基本です。
契約更新対象を効率的に確認・整理する方法
契約更新フォローを円滑に進めるためには、案内文を作る前に、どの契約について、いつまでに、誰が対応するのかを明確にする必要があります。
ここで重要になるのが契約情報の整備です。元の情報が不正確なままでは、AIでも誤案内を防げないため、管理項目と確認手順をそろえます。
整備ポイント1|更新対象の確認に必要な契約情報を整理する
基本となるのは、顧客名、契約名や管理番号、契約期間、契約満了日、更新方法、担当者、対応状況などの情報です。更新後の料金や契約期間に変更があるかどうかも確認できれば、案内内容を検討しやすくなります。複数契約を見落とさないよう、契約ごとに情報を整理します。
また、契約満了日と、更新しない旨などを伝える通知期限は、必ずしも同じではありません。契約によっては、満了日の一定期間前までに所定の通知をしなければ自動更新される場合がありますが、通知期限の有無や手続きは契約条項によって異なります。台帳の日付は契約書や変更合意書と照合しておきます。
整備ポイント2|契約満了日と更新通知期限から対象顧客を抽出する
情報が整ったら、「今後90日以内に満了する契約」や「今月中に更新意思の確認が必要な契約」など、業務の目的に応じて抽出条件を設定します。Excelでは日付列のフィルターを利用でき、対応するCRM・SFAではレポートやリストビューなどの条件設定によって対象を確認できます。ただし、利用できる機能や参照範囲は、製品の仕様や設定、権限によって異なります。
抽出時には、契約満了日だけでなく、顧客への事前案内日、契約上の通知期限、社内での確認期限も区別しておきましょう。例えば、顧客への案内に上長の承認が必要なら、その期間も見込んで着手日を決める必要があります。また、更新済み・解約確定の契約を除けるよう、ステータスの更新ルールも整備します。
整備ポイント3|AIを活用して契約情報や対応履歴を整理する
期限による抽出は既存の機能で行い、AIは文章として保存された情報を読み解くための補助に使うと、役割が明確になります。例えば、利用が認められた環境で契約書から満了日や更新条項の候補を拾い出したり、過去のメールや議事録を要約して、更新前に確認すべき事項を整理したりする使い方が考えられます。
ただし、条項や日付を読み違える可能性があるため、原本との照合は欠かせません。また、AIがCRMを直接参照できるとは限らず、製品や連携設定によって利用できるデータは異なります。連携していない場合は、社内規程に沿って必要最小限の情報を用意するなど、データの取り扱いにも注意が必要です。
契約更新のフォロー漏れを防ぐ対応管理の進め方
更新対象を正確に抽出できても、その後の連絡が担当者任せになっていては、業務全体の効率化にはつながりません。誰が、どの顧客に、いつ連絡し、現在どの段階にあるのかを確認できる状態が必要です。
対象の一覧と対応履歴を結び付けることで、確認した情報を次の行動に生かせるようになります。
更新期限や顧客の状況に応じて対応順を整理する
対応の優先順位は、単純に契約満了日が近い順では決められません。例えば、契約上の通知期限が迫っている場合は早急な確認が必要ですし、条件変更を伴う更新では、顧客側の稟議や社内調整に時間がかかることもあります。そのため、期限の制約を最優先で確認したうえで、未回答の状況や調整に必要な期間も踏まえて対応順を決めます。
判断の準備には、AIによる履歴の要約が役立ちます。過去の問い合わせや合意事項を整理すれば、担当者は優先して確認すべき論点を把握しやすくなります。ただし、AIが提案した順序をそのまま採用するのではなく、契約条件と最新の顧客状況を確認し、なぜその順番にしたかを記録しておくことが重要です。
CRM・SFAで対応状況と連絡履歴を管理する
進捗を共有するには、「未着手」「案内済み」「回答待ち」「条件調整中」「更新完了」など、対応段階を明確にしておきます。
さらに、最終連絡日、次回連絡予定日、担当者をひも付ければ、単にメールを送ったかどうかだけでなく、次に何をすべきかまで確認できるようになります。
CRM・SFAで契約情報と活動履歴を関連付けて管理できれば、担当者が変わっても経緯を追いやすくなります。期限前の通知や未対応リストの更新は対応する自動化機能で処理し、AIは活動履歴の要約や次回連絡に向けた確認事項の整理に利用します。
これにより、業務を省力化しながら対応の根拠も残せます。
AIで契約更新の案内メールを作成する方法
更新対象と対応順が決まったら、顧客への案内文を準備します。
契約更新メールは一定の形式にまとめやすいものの、更新条件や過去の相談内容によって伝えるべき情報は変わります。AIにすべてを判断させるのではなく、確認済みの情報を基に下書きを作らせ、担当者が仕上げる運用が適しています。
手順1|案内文に必要な契約情報と連絡事項を整理する
まず、対象となる契約、満了日、必要な手続き、顧客に依頼する内容、回答期限、問い合わせ先を確認します。契約期間や料金に変更がある場合は、それらが正式に確定しているかも重要です。未確定の条件をAIが推測して文面に盛り込まないよう、確定事項と確認待ちの事項を明確に分けておきます。
案内の目的によっても、文章の組み立て方は異なります。自動更新の仕組みを知らせるメールと、更新意思の回答や申込書の提出を依頼するメールでは、読み手に求める行動が違うからです。作成前に「何を伝えるのか」「何をしてほしいのか」を定めることで、AIに与える指示も具体的になります。
手順2|プロンプトを使って契約更新メールの下書きを作成する
生成AIへの指示では、単に「契約更新の案内メールを書いて」と頼むよりも、目的、相手との関係、記載事項、文体、出力形式を示した方が、必要な内容を含む下書きに近づけやすくなります。特に契約に関する情報は、与えた内容だけを使い、不足している場合は推測しないよう明示しておくことが重要です。
例えば、「既存顧客に契約更新時期を案内するビジネスメールを作成してください。目的は更新手続きの確認依頼です。契約名、満了日、回答期限、問い合わせ先は、以下の確認済み情報だけを使用してください。丁寧で簡潔な文体で件名と本文を作成し、不明な項目は補わず『要確認』として別に示してください」と指示します。
そのうえで、利用が認められた情報を入力し、生成された文面を確認します。プロンプトを工夫しても、内容の正確性まで保証されるわけではありません。契約条件、宛先、回答期限が正しいかを確かめ、必要に応じて顧客との関係に合った言い回しへ調整してから使用します。
手順3|初回案内や再連絡など目的に応じて文章を調整する
初回案内では、更新時期と必要な手続きを簡潔に伝え、顧客が次に何をすればよいかを明確にします。一方、回答がない場合の再連絡では、前回の案内日と未回答の事項を示しながら、相手の状況にも配慮した表現が必要です。すでに条件調整を進めている場合は、合意済みの内容と確認待ちの内容を区別して伝えます。
AIには、こうした連絡目的の違いを具体的に指示し、下書きの表現を調整させます。ただし、直近のやり取りを反映していないと、解決済みの事項を再度依頼するおそれがあります。
まずは人が内容を確認して送信する運用とし、修正が多かった点を次回のテンプレートや指示文に反映すると、継続的な改善につながります。
契約更新フォローにAIを導入する際の注意点
契約更新の案内では、満了日や更新条件など、誤りが顧客との認識違いに直結する情報を扱います。そのため、AIを導入する際は作業時間の短縮だけでなく、どの資料を根拠に確認するか、誰が送信を承認するかといった運用ルールを同時に整える必要があります。
注意点1|契約条件や更新期限などの正確性を確認する
生成AIは自然な文章を作成できますが、契約条項の解釈や日付の読み取りを誤ることがあります。満了日と通知期限を混同したり、入力していない料金や更新期間を補ってしまったりする可能性も否定できません。特に、自動更新や解約に関わる案内では、一つの誤りがその後の手続きに影響するため、慎重な確認が欠かせません。
作成した文章は契約書や変更合意書などの正式な資料と照合し、管理台帳とも整合しているか確認します。条項の意味を担当者だけで判断できない場合は、法務部門などの所管部署に相談することが適切です。文章が読みやすく仕上がっていることと、記載内容が正しいことは分けて評価する必要があります。
注意点2|顧客情報の管理と案内文の確認・承認ルールを整える
契約書や対応履歴には、個人情報や取引条件などの機密情報が含まれることがあります。AIに入力する前に、社内の利用規程とサービスのデータ取り扱いを確認し、入力できる情報の範囲を定めましょう。個人データについては、利用目的との整合性やサービス提供事業者による機械学習への利用の有無などを確認し、必要に応じて情報を伏せることも検討します。
あわせて、AIで下書きを作る担当者、契約条件を照合する担当者、送信を承認する担当者の役割を明確にします。履歴の要約や案内文作成から始め、修正点を蓄積しながら運用を改善すれば、品質を保ちやすくなります。
まとめ|AIを活用して契約更新フォローを効率化する
契約更新フォローの効率化には、更新対象を正確に把握し、対応状況を共有し、顧客に必要な情報を適切なタイミングで伝える仕組みが欠かせません。期限に基づく抽出や通知は既存システムの機能を利用し、AIは契約情報や対応履歴の整理、案内メールの下書きに活用することで、それぞれの強みを生かせます。
まずは契約満了日と通知期限の管理方法を見直し、業務のどこに時間がかかっているかを確認しましょう。AIに任せる作業と人が判断する作業を分ければ、連絡漏れの防止と負担軽減を両立しやすくなります。
シーサイドでは、各種AIツールの導入や活用に関するご相談も受け付けております。
お困りやご相談がありましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
