資料DL、問い合わせ、展示会名刺――BtoB企業ではリードが増えるほど「追う順番」が崩れ、結果として休眠リードが溜まりやすくなります。
休眠リードは、過去に商談や接点があったものの、その後一定期間接点がない見込み客として整理されます。
この状態を放置すると、過去データは“ただの名簿”になります。
一方で、休眠は「ゼロから新規獲得」ではなく「既に接点がある相手の再活性化」です。
手順と評価指標を持てば、単発の一斉送信ではなく、継続的に改善できる施策に変えられます。
休眠期間の定義は企業・商材で異なり、BtoBでは目安が3か月〜1年程度と説明されることもあります。
本記事は、過去データを基に「再アプローチ対象を整える」「優先順位を付ける」「訴求案を複数作る」という部分を生成AIによって加速し、人が確認して運用に落とす方法について解説します。
休眠リードの定義を固定する 掘り起こし対象をブレさせない
最初にやるべきは「休眠」の判定基準を社内で統一することです。
ここが曖昧だと、施策の対象が毎回変わり、開封率や商談化率の比較ができません。
例としては、最終接点から90日以上、失注後180日以上、資料DLから未接触が60日以上などの基準が考えられます。
数字は“例”であり、重要なのはマーケ・IS・営業が同じ物差しで会話できる状態を作ることです。
運用上は、休眠化の背景を次の3分類に落とすと扱いやすくなります。
- 獲得直後に沈黙 資料DL後に追えていない、初回接点で止まった
- 検討中に停滞 稟議待ち、優先順位低下、要件未確定
- 商談・失注後に放置 時期が合わない、体制変更、比較検討中で停止
この分類は、後工程の「訴求(何を伝えるか)」「チャネル(どう届けるか)」「営業連携(いつ渡すか)」の軸になります。
生成AI利用の前にやること 過去データを「使える形」に整える
「過去データから再アプローチリストを作る」と言っても、入力が崩れていればAIの出力も崩れます。
ここで押さえるのがデータクレンジングと名寄せです。
データクレンジングは表記ゆれ等を修正してデータ品質を高める作業、名寄せは複数データベースの顧客データを統合して一元管理する作業として説明されています。
まず揃えるべき最小セット
- 会社名(表記統一)/担当(または部署)
- 役職(意思決定距離の目安)
- 最終接点日・接点種別(商談、DL、セミナー等)
- 関心テーマ(資料名、閲覧カテゴリなど)
- 失注理由(あれば)
- 配信可否(配信停止・不達などのフラグ)
この段階で「配信停止」「不達が続く」「明らかな対象外(業種・地域等)」は除外フラグを付けます。掘り起こしは“当てる順番”と同じくらい“当てない判断”が大切です。
クレンジングと名寄せの手順
会社名((株)・株式会社)、部署名、役職名、電話番号表記など
共通IDがあればID、なければメール・住所・電話などの属性で突合して統合。
担当者が古い可能性がある場合は「担当不明」フラグを立て、企業単位でアプローチできる状態にする
判断に使わない列を決め、AI入力からも外す(誤分類を減らす)
統合・修正のルールと例外をメモしておく(属人化を防ぐ)
“完璧な統合”より、“誤送信・誤分類を減らす最低限”に寄せた方が、施策が早く回ります。
AIに渡す前提として「1行1リード要約」を作る
会社名|部署/役職|最終接点日・種別|関心テーマ|失注理由(任意)|直近反応(任意)
この形に揃えるだけで、分類・理由付け・訴求案生成が安定します。
再アプローチリストの作り方
休眠掘り起こしは「全件に均等に当たる」ほど成果が出ません。
先に優先順位を作り、限られたリソースを“当たりやすい層”へ寄せます。
そのためには、まずは次の手順で、スコア振りと、温度別キューへの落とし込みをしていきましょう。
スコアは「属性+行動×鮮度」で考える
近年のリードスコアは、行動と属性を分けて設計できる考え方が一般化しています。
例えば、世界でも利用者が多いマーケティングオートメーション(MA)のHubSpotでも、メール開封・クリック・ミーティングなどのエンゲージメント要素を点数化する仕組みが用意されています。
- 属性 業種、規模、役職、導入余地
- 行動 クリック、再訪、申込、返信など
- 鮮度 最終接点からの経過日数(古いほど減衰)
まずは“簡易スコア”で走り出す
- 属性 ターゲット業種=+10、決裁に近い役職=+20
- 行動 クリック=+10、資料DL=+10、申込=+30、返信=+40
- 鮮度 30日以内×1.0、31〜90日×0.7、91日以上×0.4
このように「点数×係数」で作ると、古い行動の影響を自然に弱められます。。
A/B/Cの温度別キューに落とす
- A(復帰見込み高) 直近で再訪/クリック等の兆しがある
- B(育成) 関心はあるが時期未定、情報収集中
- C(整理候補) 長期無反応、情報が古い
Aは短期で提案、Bは情報提供中心、Cは配信頻度低下や希望確認――と扱いを分けると、施策が破綻しません。
生成AIの使いどころ① 再アプローチリストを「整える」
AIは、分類・要約・理由付けを高速化し、人の判断を助ける役と考えましょう。
単に「再アプローチリストを作って」とだけ指示しても、AIから納得のいく出力結果は得られません。
何をAIに任せるか
AIが得意なことは、分類や要約といった分野です。
まずは、前段で作成した再アプローチリストを生成AIに投げ込み、次の出力をことを指示してみましょう。
- A/B/C分類と、その理由の短文化(営業が理解できる言葉にする)
- 優先度(高/中/低)の提案と、次のアクション案の候補出し
- 不足情報の指摘(役職不明、関心テーマ不明、担当不明など)
一方で、除外(配信停止、対象外判定)や最終承認は人が行います。
すぐ使えるプロンプト
あなたはBtoBマーケティングの実務者です。
目的:休眠リードをA/B/Cに分類し、優先度(高/中/低)と理由、次のアクション案を提案してください。
前提:(休眠の判定基準、A/B/Cの定義について自社基準に合わせて入れる)
制約:根拠は入力データの範囲に限定し、推測は「可能性」として表現。不明は不明と書く。
出力:ID,分類(A/B/C),優先度(高/中/低),理由(40〜60字),推奨アクション(30〜50字),不足情報
入力:{1行1リード要約を複数行}
出力に「不足情報」を必ず含めると、データ補完の優先順位が見え、次回以降の精度が上がります。
生成AIの使いどころ② 訴求案を量産し、勝ち筋だけ残す
休眠の掘り起こしは、同じ文面の一斉送信では安定しません。
過去接点から「関心テーマ」を置き、課題仮説を立て、次の一歩(CTA)を温度別に変えます。
訴求は「過去接点→関心→課題仮説→選択肢」で作る
たとえば、過去に特定テーマの資料をDLしているなら、そのテーマの“判断材料”を届けるのが自然です。
この時、相手の課題を断定しないことが重要です。
「〜かもしれません」「同様の検討で論点になりやすい」など、控えめな表現を心がけましょう。
生成AIに作らせるセット
- 件名 10案(短い/具体/問いかけ/数字のバリエーション)
- 導入 3案(近況伺い/アップデート共有/判断材料の提供)
- 本文骨子 2案(課題仮説→示唆→選択肢→次の一歩)
- CTA 3案(資料、チェックリスト、短時間相談、ウェビナー等)
A/Bテストは、まず件名→CTA→本文の順で小さく回すと学習が速くなります。
メール作成用プロンプト
あなたはBtoBメールマーケターです。
対象セグメント:{業種/役職/関心テーマ/温度(A,B,C)}
目的:休眠リードの再接点を作る(売り込みではなく、次の一歩を促す)
制約:断定・誇張は避け、根拠不明の主張をしない。日本語はビジネスライクに。
出力:件名10案、冒頭200字の本文3案、CTA3案(各案の狙いを一言添える)
材料:{過去接点の要約、提供できる資料/イベント/相談メニュー}
“狙い”を添えさせると、人が選びやすくなります。
配信設計と改善 KPIを分解して回す
メールだけに寄せない
休眠顧客の掘り起こし手段として、メール、ウェビナー、DM、展示会/イベント案内、電話(インサイドセールス)などを組み合わせる方法が整理されています。
いきなり架電に振るより、メールで反応(クリック、返信、申込)が出た層を優先してISへ渡す方が、営業体験も良くなります。
無反応へ送り続けない
休眠掘り起こしでも、再アプローチは回数と期間を決め、無反応が続く層は頻度を下げる・除外するルールを持つのが安全です。
最小シナリオで「反応の理由」を集める
休眠掘り起こしは、いきなり商談を迫るより「判断材料の提供→反応の確認→次の一歩」の順が安定します。
まずは3通で設計すると運用が回ります。
- 1通目 近況伺い+“判断材料”の共有(軽いCTA:関連資料/要点整理)
- 2通目 別角度の論点提示(比較観点、チェックリスト、よくある落とし穴)
- 3通目 要点の再提示+選択肢(相談、ウェビナー、受け取り継続/停止)
この3通で「開封だけ」「クリック」「返信/申込」の差が出ます。
差が出た要素(件名、CTA、提示した論点)を、次のセグメント設計とAI入力に戻すと学習が進みます。
営業(IS)連携トリガーを固定する
反応が出ても、渡し先と基準が曖昧だと機会を逃します。
最小限、次のように“渡す条件”を固定しておくと、マーケとISの往復が減ります。
- 返信、申込、ミーティング希望→即連携
- 価格/導入に近いページ閲覧、比較資料のDL→当日〜翌営業日で連携
- クリックのみ→2通目で確認して温度を上げ、条件を満たせば連携
まとめ
休眠リードは、放置すると資産になりません。
しかし、休眠定義を固定し、過去データを整え、属性・行動・鮮度を掛け合わせたスコアで優先順位を作り、AIで分類と訴求案を高速化し、人が検証して改善するという型を回せば、掘り起こしは単発施策ではなく“運用”になります。
まずは自社にどれくらいの顧客が眠っているのか、見つけ出すところから始めてみてはいかがでしょうか。
シーサイドでは、生成AIツールの活用に関するご相談も受け付けております。
お困りやご相談がありましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
